【完全ガイド】市場調査の方法と実施手順、実例を詳しく解説

この記事をシェアする

x facebook
【完全ガイド】市場調査の方法と実施手順、実例を詳しく解説

この記事でわかること

  • 市場調査の重要性と役割
  • 市場調査の主な手法と種類
  • 市場調査方法の目的別選び方
  • 市場調査の業界別調査事例
  • 市場調査のよくある失敗と解決策

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀

市場調査のお困りごとはプロにご相談ください

  • 市場の変化や顧客の潜在的なニーズを把握したいが、どうすればいいのかわからない
  • さまざまな市場調査方法があって、どの方法を選ぶべきかを決定するのが難しい
  • 収集したデータの質が不安である
このようなお困りごとがありましたら、ぜひとも私たちStrhにご相談ください。マーケティングやCRM・MA・CDP等のマーケティングテクノロジーに精通したコンサルタントが、御社に最適なソリューションをご提案させていただきます。まずはお気軽にお問合せください。 市場調査についてまずは相談する

新商品を出したい・マーケティング活動を強化したいが、そもそも「どんなニーズがあるのか」が分からない。そんな悩みを持つ方にとって、市場調査は欠かせないプロセスです。とはいえ「市場調査って具体的にどうやって進めるの?」「どの方法を選べばいいの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では市場調査の基本的な考え方から具体的な手法、調査の進め方、目的別の選び方までを解説します。また調査初心者の方でも迷わず進められるように図解やテンプレート付きで解説しています。

これから新商品開発やマーケティング活動を強化したい方、自社で初めて調査を行おうとしているマーケターや経営者の方は必見です。本記事を読めば市場調査に必要な全体像と「何から始めるべきか」がはっきりと分かるはずです。

参照:マーケティングコンサルティングとは?メリットや選び方、おすすめの会社まで紹介 | Strh株式会社(ストラ)

目次

市場調査とは何か?その重要性と役割

現代のビジネス環境は消費者ニーズや競合の変化スピードが非常に速くなっています。こうした状況下で的確な意思決定を行うためには、客観的なデータに基づいた市場調査が不可欠です。

ここでは市場調査の定義や目的、重要性、企業がそれを活用する理由、そして得られるメリットについて解説していきます。

市場調査の基本定義と目的

市場調査は消費者のニーズや競合他社の動向、市場規模やトレンドといった「マーケットの実態」を把握するための情報収集活動です。マーケティング戦略の基礎を支える調査として、企業活動において不可欠な役割を果たしています。

市場調査の定義とは

市場調査とは消費者や競合、業界全体の動きに関する情報を定量的・定性的に収集・分析し、意思決定に役立つ知見を得るためのプロセスです。調査内容は購入動機や利用シーン、価格感度、ブランド認知度など多岐にわたり、それぞれの目的に応じて調査手法やアプローチが変わります。

また市場調査は「マーケティングリサーチ」とも呼ばれ、商品開発や広告戦略の前提として実施されるケースが一般的です。

マーケティング活動における市場調査の役割

市場調査は、マーケティング活動のあらゆる段階において活用される重要な手法です。特に以下のような場面においてその重要性が高まっています。

・新商品や新サービスの開発:市場ニーズや競合製品の動向を把握することで、より的確なコンセプトの策定が可能になります。

・広告や販促活動:ターゲットとなる顧客層の関心を可視化することによって、効果的なメッセージの設計や媒体の選定が行えます。

・販売戦略の立案:市場調査によって得られたデータをもとに、適切な価格設定や販売チャネルの選択が可能となります。

・事業戦略の見直し:顧客満足度やブランドイメージなどの情報を活用し、企業の方向性を適切に修正することができます。

このように市場調査は勘や経験のみに頼ることなく、データに基づく意思決定を実現するための不可欠な仕組みとして機能します。

なぜ今、市場調査が求められているのか

現代、デジタル技術の進展により消費者行動が複雑化・多様化しています。今や「調査せずに商品を出す」ことは、高リスクな経営判断といっても過言ではありません。

ここでは、なぜ市場調査の必要性が増しているのかその背景を解説します。

市場ニーズの多様化と変化のスピード

現代の市場においては、顧客のニーズがかつてないほど多様化・複雑化しており、変化のスピードも非常に速くなっています。従来のような「大量生産・大量販売」による画一的なアプローチでは、もはや顧客の期待に応えることは困難です。SNSやレビューサイトの影響で製品やサービスに対する評価は瞬時に拡散され、ブランドの印象や売上に大きな影響を与える時代となっています。

こうした環境では、顧客一人ひとりの価値観や行動、購入プロセスを正確に把握し、それに基づいて柔軟にマーケティングや商品設計を行う必要があります。重要なのは、過去の購買履歴やオンラインでの行動データなどを活用してリアルタイムで顧客のニーズを捉え、パーソナライズされた体験を提供することです。

つまり「変化する顧客」を前提としたマーケティングが求められており、企業にはデータとテクノロジーを活用した継続的なインサイトの獲得と即応力のあるアクションが不可欠となっています。

多くの企業が市場調査に注力する理由:商品開発の精度向上

市場調査に注力する企業は、情報の質と量が成長に不可欠であると認識しています。スターバックスやP&G、トヨタなどは市場調査を戦略の中心に据え、顧客ニーズを把握し、競合に先んじた商品開発を行っています。

市場調査により顧客の価値観や行動特性を理解し、効果的なマーケティング施策を実施することが可能になります。また客観的なデータに基づく意思決定ができるため、企業の経営判断全体を支える重要な手段となっています。

市場調査の最大の成果は、顧客理解の深化です。顧客の声を深く掘り下げることで、商品開発や販促施策の精度を高めることができます。具体的なインサイトを活用することで、顧客が本当に求めているものに寄り添ったプロダクトコンセプトを打ち出すことが可能になります。これにより広告や販促施策においても一貫性のあるメッセージ設計が実現し、反応率やコンバージョン率の向上につながります。

市場調査は、成功確率を高めるための確かな投資であり、実際の市場データに基づいた企画を立案することで、商品開発における失敗コストを大幅に削減できます。

参照:顧客インサイトとは?分析方法や見つける際のポイント、成功事例を解説! | Strh株式会社(ストラ)

競合との差別化と戦略立案への活用

市場調査は自社の現状を理解するためだけでなく、競合他社の強みや戦略を客観的に把握する手段としても非常に有効です。市場全体の構造を捉えたうえで自社と競合との違いを明確にすることで差別化の方向性を見出しやすくなり、実効性の高い戦略立案が可能になります。

まず自社の強みや弱みを把握することは、ブランディングや改善活動に直結します。例えばユーザーインタビューを通じて「サポート対応が迅速で安心できる」といった肯定的な評価が得られた場合、それは競合との差別化要素としてブランドの核に据えることができます。一方で「UIが分かりづらい」といったネガティブなフィードバックが集まれば、改善すべき優先事項として開発にフィードバックすることができます。

次に顧客が競合製品のどの点に魅力を感じているのかを理解することも重要です。例えばレビューやSNSの声から「デザイン性が高い」「サブスクリプションで手軽に始められる」といった要素が評価されていることが分かれば、それに対抗する訴求ポイントとして「高い機能性」や「コストパフォーマンスの良さ」など他の価値を打ち出す戦略が組み立てられます。

さらに市場における自社のポジションを見直す際には、ポジショニングマップの活用が効果的です。価格帯と機能性などの主要な軸で市場をマッピングすることで既存プレイヤーがカバーしきれていない空白領域を発見することができ、ニッチな市場へと戦略的に参入する余地が見えてきます。

このように、市場調査は競合環境を把握する手段として戦略の再構築やターゲティングの精緻化、新市場への進出判断などあらゆるマーケティング活動における判断の質を高めます。結果として自社の競争優位性を確立し、持続的な成長へとつなげることができます。

参照:マーケティング戦略とは?立案手順や役立つフレームワークを事例付きでわかりやすく解説 | Strh株式会社(ストラ)

市場調査の主な手法と種類

定量調査と定性調査の違い

市場調査にはさまざまな手法がありますが、それぞれの特徴や活用シーンを正しく理解することで調査の精度や効果を大きく高めることができます。

ここからは、代表的な市場調査手法について目的別の使い分け方や注意点とともに解説します。

定量調査と定性調査の違いと使い分け

市場調査は大きく「定量調査」と「定性調査」の2つに分類されます。調査目的に応じて両者を使い分けることが、的確な分析と意思決定のポイントとなります。

定量調査とは?

定量調査は、数値や割合といった統計的なデータを収集し、客観的に分析することを目的とした調査手法です。代表的な例としてはアンケート調査が挙げられ、例えば「この商品にどの程度満足していますか?」という質問に対し、1〜5のスケールで回答を集めるといった形式がよく用いられます。多数の回答をもとに集計・分析することで傾向や相関関係を把握することが可能になります。

定量調査の特徴としては、以下のような点が挙げられます。

・数値として結果が得られるため、客観的な比較や統計分析がしやすい

・大規模なサンプルを対象とすることで、信頼性の高い全体傾向が把握できる

・結果をグラフや表に可視化しやすく、社内外への説明資料として活用しやすい

定性調査とは?

定性調査は、数値では捉えきれない人の感情や思考、行動の背景を深く探るための調査手法です。主な方法としてはインタビューやグループインタビュー(FGI)などがあり、自由な会話形式で情報を収集します。定量調査では表れにくい潜在的なニーズや新たな発見が得られることが多い点が大きな特徴です。

定性調査には以下のような特徴があります。

・少人数を対象にして、1人ひとりの考え方や背景に深くアプローチできる

・自由回答から新しい仮説や発見を得ることに適している

・回答の解釈や分析には、担当者の経験やスキルが求められる

このように、定量調査は「どれくらいか」を数値で把握するために、定性調査は「なぜそうなのか」を深掘りするための調査であり、それぞれの特性を理解し目的に応じて適切な調査手法を選ぶことで、より効果的な意思決定や施策設計が可能になります。

アンケート調査の特徴と活用方法

アンケート調査は、短期間で多数のデータを一括収集できる最も汎用性の高い手法です。特に定量的な傾向や属性別の違いを把握したいときに力を発揮します。実務ではユーザー満足度やサービス改善のヒントを得るために定期的に行われることが多く、社内の意思決定材料としても活用されることが多い手法です。

アンケート調査の実務での特徴とメリット

アンケート調査をはじめとする定量調査は、実務において非常に扱いやすく汎用性の高い手法です。特にマーケティングや企画部門では、意思決定や施策検証のためのデータを迅速に得る手段として活用されています。実務者の視点で見た場合、以下のような具体的なメリットがあります。

まず低コストかつ短期間で実施可能である点が大きな利点です。GoogleフォームやSurveyMonkeyなどの無料・低価格のツールを使えば、特別な開発コストをかけることなく簡単に調査を開始できます。

さらにメール、SNS、LINEなど、複数のチャネルを活用することでターゲットへの配信も柔軟に対応できます。

次にデータの集計・分析が容易であることも魅力です。回収したデータは、ExcelやGoogleスプレッドシートで即座にクロス集計や傾向分析が可能であり、さらにBIツールを使えば属性別の可視化や詳細分析もスムーズに行えます。これにより、仮説検証やターゲットごとの反応把握が簡単になります。

また社内共有や意思決定への活用がしやすいという点も実務的に重要です。定量データは数値やグラフとして可視化できるため、上司や関連部署への説明資料としても説得力があり、社内稟議や企画会議での合意形成を後押しします。

このように、アンケート調査は「低コスト・短納期」「データ処理のしやすさ」「社内活用のしやすさ」といった点で実務に非常に適した調査手法であり、意思決定のスピードと質の両面を支える有効な手段となっています。

アンケート調査の実施時の注意点

アンケート調査は手軽で効果的な情報収集手段ですが、設計や運用を誤ると信頼性や有効性に欠ける結果となってしまうことがあります。満足度の高いデータを得るためには、以下のようなポイントに留意して実施することが重要です。

まず注意すべきは、対象者のバイアスです。例えば特定の属性に偏ったサンプルや自社に利害関係のある顧客だけを対象とした場合、「選択バイアス」や「情報バイアス」が発生しやすくなります。これは、回答結果が実際の市場全体を正しく反映しなくなる原因となるため、できるだけ多様な属性に配慮したサンプリングが求められます。

また設問数はできるだけコンパクトにすることが重要です。一般的に設問数が多くなるほど離脱率が高まり、回答の質が低下します。目安としては7問以内に収めるのが理想で、10問を超えるようであれば設問の取捨選択や設計の見直しが必要になります。

加えて、選択肢の設計にも注意が必要です。例えば「やや満足」「どちらでもない」などの中間的な選択肢が多すぎると分析が曖昧になりやすく、行動につながる示唆が得にくくなります。必要に応じて選択肢の粒度を調整し、意図を明確に汲み取れるように工夫しましょう。

最後に、自由記述欄の設置は1つまでにとどめるのが基本です。自由記述は定性的な情報が得られる貴重な手段ではありますが、回答者にとっての心理的負担が大きいため設定しすぎると記入率が著しく低下します。設置する場合は「自由にご意見があればご記入ください」など簡潔で答えやすい表現を心がけましょう。

このように、アンケート調査は設問設計と対象設定に細心の注意を払うことで、より有意義で活用可能なデータを得ることができます。調査の目的を明確にし、回答者目線で設計を行うことが重要です。

選択バイアスと情報バイアス

インタビュー・ヒアリングの効果と実施ポイント

インタビューは数値では把握しきれない「なぜその選択をしたのか」という行動の背景や、本人も自覚していない感情・価値観に迫るために欠かせない手法です。

例えばあるサブスクリプション型サービスで解約が相次いでいる際、定量調査では「価格が高い」と答える人が多くても個別に話を聞いてみると「継続する理由が分からなかった」「更新メールを見落としていた」といった本質的な課題が浮かび上がることがあります。

現場でのインタビューでは、特に最初の数分間でいかにリラックスした雰囲気をつくれるかがポイントです。形式ばった問いかけではなく、雑談や日常会話から入ることで本音が出やすくなり、その後の会話の質が大きく変わります。

質問設計においてはオープンな問いを中心に据えながら相手の言葉を深掘りする「なぜ」を繰り返す姿勢が求められます。また録音や記録の体制を整えた上で後からチームで内容を振り返り、共通するパターンやインサイトを抽出する工程も欠かせません。

インタビューは調査の準備・実施・分析まで時間と労力を要しますが得られる情報の質は非常に高く、特にコンセプト設計やペルソナ策定の段階では他の手法では得られない示唆が得られる貴重な調査です。

参照:【ユーザーインタビュー設計方法】インタビューの目的や進め方のコツまで解説!

参照:【DLできるテンプレート公開】ペルソナとは?作り方の5つのステップや具体的な活用方法を解説 | Strh株式会社(ストラ)

ネットリサーチ(インターネット調査)の活用と注意点

ネットリサーチはWebを活用して多数のサンプルからスピーディーにデータを取得できる点が魅力であり、特にBtoC分野では今や定番の手法となっています。オンライン上のパネルを活用すれば、性別・年齢・居住地域などを指定して精度の高い対象者にアプローチできるため新商品テストやトレンド把握に広く利用されています。

例えば3つのパッケージデザイン案を比較する調査では、消費者に対して「第一印象」「購買意欲」「信頼感」などの観点で評価してもらうことで、社内会議だけでは見落とされがちな生活者視点を得ることができます。調査結果は数日以内に集まりリアルタイムで集計・可視化できるため、意思決定のスピードも格段に上がります。

一方で安価かつ手軽に実施できる反面、信頼性を担保する設計が求められます。特に注意すべきは、報酬目的で雑に回答する非アクティブパネルの存在です。これを防ぐには途中に注意喚起の設問を入れたり、回答時間のロジックで不正検出を行ったりといった工夫が欠かせません。

市場調査の正しい進め方

市場調査の正しい進め方

市場調査はやみくもに実施しても成果につながるとは限りません。目的に合った手法の選定や調査対象者の適切な設定、データの活用方法まで、体系的なプロセスを踏むことが調査の成功を左右します。

ここでは市場調査を効率よく、かつ実践的に進めるための基本ステップを解説します。

調査目的の明確化

市場調査を成功させるための第一歩は「この調査を通じて何を明らかにし、どのような意思決定に役立てたいのか」という目的を明確にすることです。この部分が曖昧なままでは調査設計や設問の構成にブレが生じ、結局は活用しにくいデータだけが残ってしまいます。

例えば「新商品の市場ニーズを把握したい」のか「既存顧客の満足度を測りたい」のかによって必要な情報や調査アプローチは大きく異なります。新商品開発であればニーズの有無や市場規模の把握が重視され、既存サービスであれば課題や改善ポイントに焦点を当てた設問が求められます。

調査の目的は「意思決定に何を活かすのか」まで明文化し、企画・営業・マーケティングなどの関係部署と共有・すり合わせを行うことが肝心です。これにより調査結果の評価基準も明確になり、結果の解釈に一貫性が生まれます。

調査設計と対象者の設定

目的が明確になったら次に必要なのが具体的な調査設計です。どのような情報を誰からどの手法で収集するかを体系的に計画します。

特に重要なのが調査対象者の選定です。ターゲットが明確でない状態で広く調査を行っても断片的で解釈の難しい結果になってしまいます。例えば20代女性向け化粧品の満足度調査であれば「年齢」「性別」「購入経験」などの条件を具体的に定めたうえで対象者を抽出する必要があります。

さらに調査の実施時期・規模、使用するツール、対象者への接触手段(メール・SNS・電話など)もこの段階で設計します。誰にどのタイミングでどのような文脈で質問するかまでを想定することで、より精度の高いデータ取得と実施効率の向上が期待できます。

調査手法の選定と実施準備

調査設計をもとに適切な調査手法を選びます。数値的な傾向を把握したい場合はアンケートなどの定量調査が適しており、ユーザーの深層心理や行動の背景を知りたい場合にはインタビューなどの定性調査が有効です。

実務上では、両者を組み合わせたハイブリッド型の調査も多く見られます。まず定量調査で全体の傾向を把握し、その上で一部のターゲットに定性調査を行うことで広さと深さを兼ね備えた分析が可能になります。

実施準備としては、設問の表現の見直しや調査対象者への事前案内、ツールの動作確認、パイロット調査の実施などが含まれます。特に設問は調査結果の質を左右する重要な要素であり、誰が読んでも誤解のない平易な表現を心がけることが重要です。

調査実施とデータ収集

調査の実施フェーズでは、設計通りに調査が進行するように管理体制を整えることが大切です。オンライン調査では、回答期限の設定やリマインドメールの送信が必要であり、インタビュー形式であればインタビュアーのスキルが情報の深さに直結するため事前のトレーニングやマニュアルの用意が不可欠です。

また調査中には、矛盾した回答や途中離脱といった無効データが発生することも想定し、リアルタイムで状況を把握しながら進める体制が望まれます。場合によっては途中集計によって設問の妥当性を確認し、必要に応じて調整する柔軟さも求められます。

この段階では「データの量を確保するだけでなく、質を担保する」という意識が非常に重要です。

データ分析と結果の活用

調査が終了したら、収集したデータの分析と結果の活用に移ります。定量調査の場合は、単純集計やクロス集計を用いて傾向を可視化し、属性別の反応やスコアの偏りを探ります。定性調査の場合は、回答内容に含まれるキーワードや感情の傾向を整理し、深層ニーズや仮説の検証に役立てます。

分析で最も重要なのは、調査目的に立ち返ることです。得られたデータが当初想定していた意思決定に対してどのようなインサイトを提供するのかを見極めることが調査を使える情報に変えるポイントとなります。

最終的には分析結果を社内レポートや企画提案書、戦略検討資料として活用します。ただ情報を報告するだけでなく「次に何をすべきか」というアクションまでを含めて示すことで、調査の成果が経営や事業にしっかりとつながっていきます。

参考:【初めてのデータ分析】ビジネスマン必須スキル!知っておきたいデータ分析の基本

目的別の市場調査手法の選び方

市場調査にはさまざまな手法がありますが、最も重要なのは先ほどから述べている通り「調査の目的に応じた適切な手法を選ぶこと」です。新商品開発か既存サービス改善か、対象がBtoBかBtoCかなど、目的によって収集すべき情報や適したアプローチが異なります。ここからは代表的な目的別に、どのような調査手法が有効なのかを解説します。

新商品開発に適した市場調査とは

新商品開発では市場のニーズや競合状況を正しく把握することが極めて重要です。多くの企業が失敗する原因は、「作りたいものを作ってしまう」ことにあります。成功確率を高めるには開発の初期段階から調査を行い、顧客の課題や潜在ニーズを構造的に捉えるプロセスを置くことが重要です。

ニーズ探索と仮説検証の進め方

新たな商品やサービスの企画・開発において重要なのが「まだ顕在化していないユーザーニーズ」をいかに見つけ出し、それを根拠にした仮説をいかに検証していくかというプロセスです。この一連の流れは、企画段階からユーザー視点を取り入れた勝てる戦略を構築するために必要です。

まず最初のステップとして行うのが定性調査によるニーズ探索です。ここではユーザーインタビューやグループディスカッション(FGI)などを活用して、生活者が日常の中で抱えている不便さや不満、潜在的な期待を丁寧に掘り起こしていきます。

特に重視すべきはユーザー自身がまだ明確に言語化できていない感情や価値観に耳を傾けることです。例えば「荷物が多くて、移動中に化粧直しがしにくい」といった発言は、単なる愚痴に見えてもそこには「片手で手軽に使える化粧品が欲しい」という新しいニーズの芽が隠れている可能性があります。

このような定性調査で得られた気付きや仮説を次のステップで定量調査を通じて検証していきます。具体的にはアンケートなどを用いて、「片手で使える化粧品を欲している人がどれくらいいるのか」「そのニーズはどの年代・性別に多いのか」など、ユーザー全体の傾向を数値として可視化します。仮説が多くの人に共通する課題であれば、市場性の裏付けとなり、開発の意思決定に説得力を持たせることができます。

このように、定性調査による仮説の構築→定量調査による仮説の検証という流れを踏むことでユーザーインサイトを企画に落とし込みやすくなり、直感や思い付きではなくデータに基づいた論理的な商品開発が可能になります。感覚的に企画を立てるのではなく、リアルな生活者の声に根差した企画を積み上げていくことが競争優位を築く第一歩となるのです。

プロトタイプ調査の活用

製品のコンセプトがある程度固まり、具体的な形が見え始めた段階ではプロトタイプ(試作品)を活用した調査が非常に効果的です。完成前の段階であっても簡易的なモックアップやワイヤーフレームなどを用いてユーザーの反応を確認することで、製品の精度を大きく高めることができます。

このフェーズでの主な目的は、「実際に使ってみたときの印象や違和感」「想定した機能や構造がユーザーにとって自然に受け入れられるか」「価格に対する納得感があるか」といったリアルな使用体験を通じたフィードバックの取得です。ユーザーに実際にプロトタイプを触ってもらいながらインタビューや観察を行うことで、言語化されにくい不満点や気付きが浮き彫りになります。

このようなプロトタイプ調査を開発プロセスに組み込むことで、早期段階での問題発見と改善サイクル(フィードバックループ)が実現できます。その結果完成後の手戻りを減らし、開発リソースの最適化と市場投入後の満足度向上につなげることが可能です。

またユーザーの反応を見ながら設計を微調整するプロセスは、ユーザー中心設計(UCD:User-Centered Design)の考え方にも合致しており、満足度や体験価値を高めるための重要な手法といえます。

試作品の段階であっても、実際のユーザーに見せて検証することで「本当に欲しいと思われるものかどうか」を見極められることがプロトタイプ調査の大きな価値です。

既存サービス改善に活用すべき調査手法

既存サービスの改善ではすでに顧客との接点があるため、実利用者の声を軸に調査設計を行うのが基本です。ポイントは「現場で起きている不満」を定量・定性の両面から把握することです。

顧客満足度調査の設計と活用

顧客体験を定量・定性の両面から把握し、サービスの質を継続的に改善していく上で欠かせないのが顧客満足度調査(CS調査:Customer Satisfaction Survey)です。特にNPS(Net Promoter Score)を定期的に測定することにより、顧客満足度の推移や離反の兆候を定点的に観察できるため多くの企業で取り入れられています。

NPSとは「この商品・サービスを他人に薦めたいと思いますか?」という質問に0〜10のスコアで答えてもらい、その回答をもとにロイヤル顧客(推奨者)と離反予備軍(批判者)に分類することで全体のエンゲージメント状況を可視化する指標です。この数値を継続的に追いかけることで改善活動の成果や顧客の反応をタイムリーに把握することができます。

ただしNPSや5段階評価などのスコアのみでは実態をつかみきれないことも多くあります。そこで重要になるのが自由記述欄による定性情報の収集です。「どの場面で不満を感じたのか」「どのように改善してほしいか」といった具体的な声は数値だけでは見えないリアルな課題や感情を浮き彫りにしてくれます。

こうした定性コメントを分析することでUIの細かな使い勝手やサポート対応の印象、価格への感じ方などサービス全体における隠れた改善ポイントが明確になります。定量スコアと定性コメントを組み合わせることで改善の優先順位を明確にし、的確なアクションへとつなげていくことが可能です。

顧客満足度調査は単なる満足度の確認ではなく、「顧客の本音を拾い上げ、継続的に改善していくための仕組み」として設計・活用することが顧客ロイヤルティの向上や継続利用につながる最も有効な方法です。

離脱・解約理由の調査方法

SaaSやサブスクリプション型の継続課金サービスにおいては、顧客の離脱や解約理由を正しく把握することが非常に重要です。新規顧客の獲得に注力するだけでなく既存顧客の維持と継続利用を促進するためには、なぜ顧客が離れてしまったのかを深く理解し、そこから得た学びを次の改善に活かすことが求められます。

解約理由の調査は、まずアンケートによって大まかな傾向を把握することから始めます。解約の手続き時に「なぜこのサービスをやめるのか」といった簡潔な設問を設け、「料金が高い」「使い勝手が悪い」「期待していた機能がなかった」「他社サービスに乗り換えた」などの選択肢を提示することで離脱の理由を定量的に把握することができます。

しかし選択式の回答だけでは表面的な理由しか見えてこない場合も多いため、自由記述欄や個別ヒアリングを併用することが効果的です。例えば「チュートリアルの説明が分かりにくかった」「導入初期に社内で活用が浸透しなかった」といった、サービス提供側では気づきにくい課題が明らかになることがあります。

さらに解約時の調査では「最後にサービスを利用したのはいつか」「どのサービスに乗り換えたか」「どのような改善があれば再度利用を検討するか」といった具体的な設問を加えることで、単なる不満の把握にとどまらず、サービス改善や再アプローチに活かせる情報を得ることができます。

一方で解約直後の調査では感情的な反応が含まれる可能性もあるため、一定期間を空けてからフォローアップ調査を行うことでより客観的で冷静な意見を収集することも可能です。

離脱や解約の背景を丁寧に掘り下げることでプロダクトの改善点やサポート体制の見直し、さらにはリテンション施策の強化につながります。得られたフィードバックは、単なる調査データとして終わらせるのではなく社内で共有し、次のアクションにつなげていくことが何よりも重要です。

BtoB/BtoCによる手法選定の違い

市場調査はBtoBとBtoCで設計のアプローチが大きく異なります。それぞれのビジネスモデルにおける意思決定プロセスや顧客行動の違いに合わせて、調査の手法や設計も調整する必要があります。

BtoB向け調査のポイント

BtoB領域における市場調査では、BtoCと比べて意思決定プロセスが複雑で関与者も多岐にわたるため、調査設計にはより戦略的な視点が求められます。特に単一の担当者からのアンケート回答だけでは、実態を正確に捉えるのは困難です。購買担当者や現場の利用者、経営層など異なる立場のステークホルダーそれぞれに対してヒアリングを行い、意思決定に影響を与える要素を多角的に把握することが必要です。

BtoBの購買判断では、価格や機能だけでなく導入時の負担やサポート体制、既存システムとの親和性、ベンダーの信頼性などが重視されます。そのため調査項目には「導入前に懸念していた点」「実際に導入して分かった利便性や課題」「比較検討した他社サービス」など具体的かつ実務に即した設問を盛り込むことが効果的です。

またBtoBでは導入検討期間が長期にわたるケースが多いため、調査では「検討段階で重視した評価基準」や「決定までのプロセス」についても深掘りすることで今後の営業活動やマーケティング戦略に役立つ定性的なインサイトが得られます。

このようにBtoB向け調査では単なる満足度評価にとどまらず、導入前後のギャップや他社との比較要素、部門間の評価の違いまで踏み込んだ設計が質の高いフィードバックを得るために必要となります。ステークホルダーごとのニーズや懸念を的確に捉えることでより実効性のある製品改善やコミュニケーション戦略につなげることができます。

BtoC向け調査のポイント

BtoCにおける市場調査では購買行動が直感的かつ感情的に行われる傾向が強いため、顧客の「好き・嫌い」や「印象」といった主観的評価も非常に重要な指標となります。BtoBと比べて意思決定のスピードが速く、個人の感情やイメージが購買に大きく影響するため、調査においては定量データだけでなく感覚的な反応や心理的な要因も丁寧に捉える必要があります。

また近年はSNSやレビューサイトなどの第三者評価が購買行動に強い影響を与えているため、ネットリサーチやソーシャルリスニングといった手法の活用も効果的です。これにより企業が発信していない領域での「生活者の本音」を収集でき、よりリアルな顧客像に迫ることが可能になります。

調査設計においては単に商品の評価を問うのではなく、ターゲット層の生活背景や価値観に踏み込んだ設問を組み込むことがポイントです。例えば「どのような場面でその商品を知ったのか」「どんな瞬間に欲しいと感じたか」といった購買に至るまでのトリガーを明らかにする質問を設けることで、広告やプロモーションなどのマーケティング施策に直結する示唆が得られます。

BtoC調査では、顧客の感情や体験に寄り添った視点で設計し、数値では表れにくい潜在ニーズや行動のきっかけを浮かび上がらせることが実践的なマーケティング戦略の立案につながります。購買の背後にある気持ちに焦点を当てることが生活者理解を深めます。

スタートアップ・中小企業向け市場調査の進め方

リソースが限られているスタートアップや中小企業においても市場調査は極めて重要です。調査の規模ではなく「必要な情報を、必要な形で取る」ことを意識すれば、限られたコストでも高い成果を得ることは十分可能です。

低コストで実施可能な調査方法

低コストで市場調査を実施するためには、限られたリソースの中でいかに効率よく情報を収集するかが重要なポイントになります。特にスタートアップや小規模事業者では、専門の調査会社に依頼する予算が確保できないケースも多いため自社で実行可能な調査手法を知っておくことが非常に有効です。

代表的な手法としては、GoogleフォームやSurveyMonkeyなどの無料アンケートツールを活用した調査が挙げられます。これらは手軽に設計・配信でき、集計も自動化されているため初めてでも扱いやすいのが特徴です。配信方法としては、既存顧客へのメール配信、SNS上でのアンケート募集などがあり、手持ちのリソースを活用することで広告費をかけずに調査対象を集めることができます。

また初期段階の仮説検証においては、社員や知人を対象としたユーザーインタビューも非常に有効です。身近な人のリアルな声を通じてサービスやプロダクトに対する第一印象や使用感など、重要なヒントが得られることも少なくありません。特にプロトタイプ段階では、少人数の声でも大きな示唆につながる場合があります。

ただし低コストであっても有効な調査とするためには、「対象を明確に絞ること」と「設問設計に無駄がないこと」が不可欠です。誰にどんな目的で何を聞きたいのかを明確に定めた上で、質問項目を最小限に抑えつつ本質的な情報が得られるよう工夫することが大切です。例えば購入経験のあるユーザーにだけ絞って満足度や再購入意向を聞くといったターゲティングが成果の精度を大きく左右します。

限られた予算や時間の中でも設計と実行を工夫すれば、十分に実用的なデータを得ることが可能です。小規模であっても実行力のある調査を積み重ねることで、次の戦略や意思決定に活かせる確かな土台を築くことができます。

意思決定を加速させる調査の見極め方

市場調査を成功に導くためには「何を調べるか」以上に「なぜ調べるのか」を明確にすることが重要です。限られた時間とリソースで最大の成果を得るためには、調査を始める前にまず「この情報を得ることで、どんな意思決定が可能になるのか?」を自問する必要があります。

市場調査を行う際には、目的を明確にすることが重要です。調査の目的が不明確だと、収集したデータが活用されず無駄に終わるリスクがあります。具体的には調査によってプロダクトの仕様変更や販売戦略の見直し、ターゲットの再設定が可能かどうかを考える必要があります。目的を明確にすることで必要な情報を的確に収集し、効果的な戦略立案につなげることができます。

特にスタートアップやスモールビジネスにおいては、スピードと資源の制約が常につきまといます。その中で「とりあえず調べてみる」という姿勢では、調査そのものが目的化してしまい、事業の前進には結びつかなくなってしまいます。調査はあくまで手段であり、最終的なゴールは事業を動かす判断を支えることであるという本質を常に意識する必要があります。

そのためには、調査を設計する段階で「調査結果をどう使うか」「どのアクションに活かすか」までを具体的に想定しておくことが重要です。また調査設計時に仮説を立て、「その仮説が正しいか否かによって何をどう変えるか」までセットで考えることが実行可能で意味のある調査につながります。

自社で行う市場調査と外注の違いとは|判断基準と費用の目安

市場調査を実施する際に多くの企業が悩むのが「自社で行うべきか、外部に委託すべきか」という判断かと思います。それぞれにメリット・デメリットがあり、調査の目的や規模、社内リソースの状況によって最適な選択は変わります。

ここでは自社実施と外注の違いを明確化し、どちらを選ぶべきか判断するための基準や費用感について解説します。

市場調査内製化のメリット・デメリット

近年、企業の中で「市場調査を内製化したい」というニーズが高まっています。これまでは調査会社に依頼するのが一般的でしたが、社内で調査を設計・実施・分析まで完結させる動きが増えています。

SaaS型の調査ツールや無料のアンケートフォームなどが充実してきたこともあり、以前よりもコストを抑えつつ自社のタイミングと目的に沿った柔軟な調査運用が可能になってきたことが背景にあります。

ここでは、市場調査を内製化するメリットとデメリットを解説します。

市場調査内製化のメリット

市場調査を自社内で実施する最大の利点は、スピードと柔軟性の高さにあります。調査対象の選定から設問の設計や配信、データの回収・分析までをすべて社内で完結できるため、アイデアが浮かんだタイミングで即座に行動へ移すことができます。外部への発注や調整に時間を割かずに済むため、タイムリーな意思決定をサポートする実践的なアプローチとして有効です。

さらに自社の製品・サービスや顧客について深く理解している社員が中心となって調査を行うことで、より現場に即した設問設計や分析が可能になります。外部への説明や情報共有の手間も省けるため、コミュニケーションコストの削減にもつながります。

特にスタートアップや小規模チームでは、開発初期の仮説検証やユーザーインタビューをスピーディーに繰り返すことが競争優位の源泉になります。内製化により迅速な意思決定と改善サイクルの実現が可能となり、限られたリソースの中でも有効な施策を打ち出しやすくなります。

市場調査内製化のデメリット

内製化にはいくつかの注意すべき課題もあります。まず挙げられるのが人材とノウハウの不足です。調査の設計には質問文の構成や回答バイアスの排除、分析手法の選定など専門的な知識が必要であり、それをマーケター1人が担うには負荷が大きくなりがちです。

また調査対象者のリクルーティングやサンプル数の確保が難航する場合もあります。特定の条件を満たすユーザーを十分に集められないと結果の信頼性が低くなり、判断材料としての有効性が損なわれる恐れがあります。特にBtoB調査やニッチな業界においては対象者へのアプローチ自体が大きな壁となることもあります。

さらに調査の客観性や分析の精度を高めたい場合、社内リソースだけでは限界があるのも事実です。仮に自社で全てを完結させたとしても、第三者による視点がないことで結果が偏ってしまうリスクも否めません。そのため精緻な設計や高度な分析が求められる調査については、外部のリサーチ会社やコンサルティング会社の活用を視野に入れることも有効です。

内製化は非常に有用な選択肢ではありますが、その成功にはリソースの見極めと活用範囲の線引きが欠かせません。自社で担える部分と外部の力を借りるべき部分を柔軟に判断することが調査精度と効率性の両立につながります。

外注時の判断基準と費用感

市場調査を外部に依頼するかどうかを判断する際には、自社で対応可能な範囲と外部の専門性を活用すべきタイミングを見極めることが重要です。特に全国規模の調査や1,000人以上の大規模なサンプルを必要とする場合には、外部への委託を前向きに検討する価値があります。

また社内に調査設計や分析に関する専門的な知識が十分でなく、実施や結果の解釈に不安がある場合も外部の支援を受けることで精度の高い成果を得ることができます。

さらに調査結果に対して客観性や第三者視点が求められる場面、例えば投資判断や外部への報告資料として使用する場合などは社内での実施よりも専門機関に依頼する方が適しています。加えて調査結果を経営判断やプロダクト開発の根拠として正式に活用したい場合にも、調査会社の力を借りることでより説得力のある資料作成と戦略立案が可能になります。

このようなケースでは、調査会社に依頼することで調査設計から実施、集計、分析、レポーティングまでを一貫して対応してもらえるため、信頼性と専門性の高いアウトプットが期待できます。

選定すべき調査会社の特徴

外注先を選定する際には、価格や調査の規模だけで判断するのではなく、自社が調査においてどのような支援を求めているのかという観点から比較・検討することが重要です。例えば選定候補の調査会社に自社の業界や目的に即した過去の実績があるかどうかは、信頼性のあるアウトプットを得るための重要な指標となります。

また調査内容に応じて柔軟に設計を提案できるかどうかも大切な判断基準です。あらかじめ決まったフォーマットで進めるのではなく、目的や対象に応じて設問や分析手法を柔軟に組み立てられる調査会社であれば、より実践的な調査が可能になります。

加えて限られた納期や予算に対しても柔軟に対応し、代替案や優先順位の調整などを提案してくれる姿勢があるかどうかも確認しておきたいポイントです。

さらに調査結果を単なる数値の報告にとどめず、そこから導かれる示唆や活用提案まで踏み込んで提供してくれるかどうかも調査会社を選ぶうえでの大きな差になります。調査を実施するだけで終わる会社の場合、レポートが単純な集計にとどまり、ビジネスの意思決定に活かしきれない可能性があります。

そのため、価格の安さだけで選ぶのではなく、調査の質や支援内容を含めて総合的に判断することが重要です。価格だけで決定してしまうと結果として調査のやり直しや追加対応が必要になるリスクがあり、かえってコストと時間がかさむこともあるため注意が必要です。

費用相場と見積の比較ポイント

市場調査を外部に依頼する際の費用は調査の規模や実施方法、分析の深さによって大きく異なります。一般的な目安としてはWebアンケートで100〜300サンプルを回収する場合は30〜80万円程度、5〜10名を対象とした定性インタビューでは40〜100万円程度、全国規模で1,000サンプル以上を対象にした定量調査と分析レポートを含む場合には100〜300万円程度が相場となります。

ただし見積書を確認する際には、単に総額だけで判断するのではなく、調査を構成する各要素に分解して確認することが非常に重要です。具体的には調査設計を含むかどうか、すなわち仮説の立案や設問の設計を外部に任せられるかどうかを確認することが基本です。また設問数や対象者数はそのまま工数とコストに直結するため、見積額の内訳として必ず確認すべき項目です。

さらにデータ回収の方法もコストに影響を与える要素です。例えば調査パネルの提供があるか、配信手段は何を用いるのかといった点をチェックする必要があります。分析手法についても単純な集計だけなのか、それともクロス集計や因子分析といった高度な分析が含まれるのかによって費用と成果の質は大きく変わってきます。

そして最後に、作成されるレポートの内容も比較検討すべき重要なポイントです。グラフや数値中心のシンプルなレポートにとどまるのか、それとも調査結果をもとに示唆や提言まで含めた踏み込んだ内容になっているのかによって調査の活用価値は大きく変わります。

こうした項目を丁寧に比較・精査することで価格と内容のバランスを見極め、費用対効果の高い外注先を選ぶことができます。最終的には、自社の目的に対して必要十分な調査が行えるかを基準に判断することが成果につながる最適なパートナー選びへとつながります。

フレームワークを活用した市場調査

市場調査をより構造的・戦略的に行うには、マーケティング領域で確立されたフレームワークを活用することが効果的です。分析の視点を抜け漏れなく整理できるだけでなく、社内メンバー間の共通認識を形成する際にも有効です。ここからは代表的なフレームワークと、その活用方法・設計テンプレートについて解説します。

市場分析に役立つ代表的なフレームワーク

3つの代表的なフレームワーク

市場や事業環境の全体像を把握する際には、以下のようなフレームワークを活用することで多面的な分析が可能になります。

SWOT分析|強み・弱み・機会・脅威を洗い出す手法

SWOT分析は企業の内部要因(Strength:強み/Weakness:弱み)と外部要因(Opportunity:機会/Threat:脅威)をマトリクスで整理する手法です。例えば競合に対して「商品開発力が強い(S)」が「価格競争に弱い(W)」、一方で「市場の成長性が高い(O)」が「新規参入の脅威がある(T)」といった具合に分析します。

この分析により「強みを活かして機会をどう捉えるか」「弱みと脅威への対策は何か」といった戦略構築につながります。市場調査の設計時にもこの4象限に対応する情報を集めることで調査項目の網羅性を高めることが可能です。

参照:【図解】SWOT分析とは?目的や実施方法、ポイントなどを徹底解説

PEST分析|マクロ環境からトレンドや変化を読み取る

PEST分析は政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)という4つの外部環境要因を視野に入れて、業界や市場の変化を予測するための手法です。

例えば食品業界では「食の安全に関する規制強化(P)」「原材料の高騰(E)」「健康志向の高まり(S)」「代替肉やスマート農業の進展(T)」といった情報を収集し、それらが市場機会または脅威になり得るかを判断します。

PEST分析は中長期の戦略設計や新規事業の市場選定において特に有効で、市場調査の背景を定性的に捉える視点として役立ちます。

3C分析|顧客・競合・自社の視点から市場環境を把握する

3C分析は、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」という3つの要素に着目し、自社の市場におけるポジションや差別化のポイントを明確にするためのフレームワークです。この枠組みをもとに市場調査を設計・実施することで戦略立案に直結する実践的なインサイトを得ることができます。

まず「顧客(Customer)」に関しては、ニーズや購買行動、満足度といった項目を中心に調査を行います。アンケートやインタビューを通じて顧客がどのような課題を抱えているのか、どのような価値を求めているのかを具体的に把握することが目的です。これにより、ターゲット顧客の理解を深め、商品やサービスの方向性を的確に定めることができます。

次に「競合(Competitor)」に対しては市場シェア、価格設定、製品・サービスの提供価値などを比較調査することで自社が市場内でどのような立ち位置にあるのかを明確にします。競合他社との違いや優位性、あるいは見落としている改善ポイントを把握することで差別化戦略の構築に役立てることができます。

そして「自社(Company)」に関しては、自社の強みや弱み、組織的な対応力やリソース配分状況などを内部ヒアリングやKPIの分析を通じて可視化します。経営資源がどこに集中しているのか、または課題がどこにあるのかを整理することで現実的かつ実行可能な戦略の設計が可能となります。

このように、3C分析をベースにして市場調査を構成することで各要素が相互に補完し合いながら、全体的な施策の優先順位やリソースの最適な配分を判断しやすくなります。フレームワークと調査を組み合わせることで、感覚的な意思決定ではなくデータと論理に基づいた戦略立案が実現できるようになります。

参照:3C分析とは?メリットや具体的なやり方、コツなどを分かりやすく解説

各フレームワークの使いどころと組み合わせ方のポイント

これらのフレームワークは単体で使うこともできますが、目的に応じて組み合わせて使うことでより立体的な分析が可能になります。

例えば新規事業の市場性評価では、まずPESTでマクロ動向を把握し、次に3Cで業界構造を捉え、最後にSWOTで自社が勝てるポイントを明確化するというステップが有効です。

調査設計時にも「各フレームに対応する情報をどう集めるか」という発想で設問や対象者を設定することで、無駄のない構造的なリサーチが可能になります。

ただしフレームワークを活用することが目的にならないように、調査の目的に都度立ち返ることも重要なポイントです。

5W1Hによる調査設計の考え方

市場調査の構造化においてもうひとつ有効なのが「5W1H(Who, What, When, Where, Why, How)」です。これは調査設計を抜け漏れなく整理するための基本フレームであり、特にアンケートやインタビュー項目の設計時に有効です。

5W1Hの基本構成と市場調査への応用方法

5W1Hとは、「Who(誰が)」「What(何を)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」という6つの要素から構成される思考整理のフレームワークであり、市場調査の設計にも非常に有効です。このフレームを活用することで調査内容に一貫性が生まれ、回答者の認知負荷を軽減しつつ実務に活かせる有用なデータを取得しやすくなります。

例えば調査の初期段階で以下のように項目を整理しておくと設問の漏れや偏りを防ぐことができます。

5W1Hの基本構成

このように整理したうえで調査票を設計すれば、情報の抜け漏れを防ぎ、精度の高い結果につなげることが可能です。

調査目的の明確化における「Why」と「What」の役割

5W1Hの中でも特に重要なのが「Why(なぜ調査をするのか)」と「What(何を明らかにしたいのか)」の2点です。この2つは、調査全体の軸を定める根幹にあたります。

「Why」は調査の目的を示し、例えば「新商品の開発に活かす」「顧客満足度の課題点を特定する」など調査を通じて最終的に何を実現したいかを明らかにします。

「What」は知りたい情報そのもので仮説や課題を整理する出発点となります。

この2点が不明確なまま調査を始めると、設問内容や対象者の選定がブレてしまい、実務に活かせない結果を招く恐れがあります。そのため調査設計の初期段階では、5W1Hをベースに「調査設計シート」を作成し、関係者間で認識をすり合わせておくことが推奨されます。

調査対象者と手法の選定に使える「Who」と「How」

調査の成功可否を左右するのが「Who(誰に聞くか)」と「How(どのように聞くか)」という設計要素です。調査対象者の属性(年齢、性別、職業、購買履歴など)を適切に定義することでより精度の高いデータを収集できます。

さらに、接触手段や手法の選定も結果に直結します。例えばBtoB向けであればメールによるアンケートや電話インタビューが適している一方、BtoC向けではSNS広告を使ったリクルーティングやWebアンケートが有効なケースもあります。

対象者の設定を誤ると期待する示唆が得られなかったり、逆に誤った方向性に導かれたりする危険性があるため非常に慎重な設計が求められます。

「いつ・どこで」調査を行うかの判断軸

「When(いつ実施するか)」と「Where(どこで実施するか)」も調査結果に影響を与える重要な要素です。例えば消費者の意識は時期によって大きく変化するため、年末や新年度といったタイミングでは購買意欲や心理状態に明確な違いが表れます。

また調査を行う環境によっても回答の質に差が出ます。通勤中のスマートフォンによる回答と自宅で落ち着いて行うPC回答とでは、集中度や自由記述の密度が異なる可能性があります。

こうした要因を踏まえて、最適なタイミングと場所を選定することが信頼性のあるデータ収集につながります。

テンプレートを活用した調査票の作り方

市場調査において設問設計の良し悪しはデータの質を大きく左右します。

調査票はただの質問リストではなく、調査目的に沿って論理的に構成されたコミュニケーションツールです。

ここでは、実務でそのまま使えるテンプレートの構成方法と活用のポイントを解説します。

設問設計の基本構成|導入質問・本題・自由記述

アンケートの設問設計は、回答者の心理的負担を軽減しながら、必要な情報を的確に収集するために3つのセクションで構成するのが基本です。

まず最初に配置するのが導入質問(ウォーミングアップ)です。このパートでは回答者がスムーズにアンケートに取り組めるように答えやすい内容から始めることがポイントです。具体的には「年齢」「性別」「居住地」などの属性情報や「このサービスを知っていますか?」といった認知度に関するシンプルな質問が適しています。ここで回答者との距離を縮めることでその後の質問に対する回答精度が向上します。

次に続くのが本題(コアパート)です。ここでは調査目的に直結する重要な設問を配置します。「商品やサービスを知ったきっかけ」「購入時に重視した点」「利用後の満足度」など、明確な仮説や目的に基づいた質問を用意する必要があります。このパートで気をつけるべきなのは1つの設問で複数の意図を含めないことです。テーマを明確に分け、回答者が混乱しないように設計しましょう。また、質問の順序にも配慮し、自然な流れになるよう工夫することが重要です。

最後に配置するのが自由記述(深掘り・補足)です。選択式では拾いきれないリアルな声を収集するために「改善点があれば自由にご記入ください」などのオープンエンド型の設問を設けます。ここでは回答を強制せず任意とすることで、回答者が率直な意見を述べやすくなります。このパートで得られる意見は、定量データでは見えない新たな示唆を得る貴重な情報源となります。

回答の質を高める選択肢の作り方と注意点

定量調査では、設問だけでなく選択肢の設計が結果の精度に大きな影響を与えます。実務で見落としがちなのが選択肢が狭すぎる、あるいは偏りすぎているケースです。例えば「サービスに満足していますか?」という質問に対して「はい」「いいえ」しか選択肢がない場合、どちらにも当てはまらない中立的な意見を排除してしまう恐れがあります。こうした場合は、「どちらともいえない」や「わからない」といった選択肢を加えることでより正確なデータが得られます。

さらに選択肢の並び順も回答に影響を与える要因のひとつです。例えば最も一般的と思われる選択肢を先頭に置くと深く考えずにそれを選んでしまう「直感バイアス」が働くことがあります。これを避けるために、選択肢の順序をランダムに表示するなどの工夫を取り入れるとより実態に近い回答が得られやすくなります。

加えて選択肢の最後に「その他(自由記述)」を設けておくことで、用意された選択肢に当てはまらない意見も拾うことができます。こうした柔軟な設計が調査データの厚みと深さを増すために非常に効果的です。設問と選択肢の整合性を意識しながら、回答者が自然に選べる構成にすることが質の高いアンケート調査を実現するため必要です。

無料で使える調査票テンプレート

ここまでの内容を踏まえて調査を行うための調査票のテンプレートをご用意いたしました。無料でDLできますのでこちらの調査表を元にカスタマイズして、自社用の調査表テンプレートを作成してみてください。

参照:調査票テンプレートのダウンロードはこちらからダウンロードください。
▼スプレッドシートはこちらからダウンロード
▼Excelは下記「Excel調査票テンプレート」からダウンロード

業種別の市場調査例

市場調査のアプローチは、業種によって大きく異なります。

業界特有の商習慣や顧客行動を前提にした調査設計が求められるため、汎用的な調査手法をそのまま流用するだけでは実態を把握できないことも多々あります。

ここではアパレル、飲食、IT・SaaS、新規事業立ち上げという4つのシーンにおける市場調査の実践例を紹介します。

アパレル業界の市場調査例

アパレル業界では感性や流行といった定量化しにくい要素が購買行動に大きく影響を与えるため、定性・定量のハイブリッド調査が有効です。

あるファッションブランドを例に挙げると、新ラインを立ち上げるにあたり既存顧客を対象にインタビューを実施し、着用シーンや不満点を深掘りした上で色やシルエットの方向性を検討します。

その後SNS広告を活用して3案のビジュアルをABテストし、クリック率とブランド好感度を調査します。

定性調査で仮説を立て定量データで検証するというプロセスで、ブランドイメージと商品設計の整合性を高めるといったアプローチを行うことが考えられるでしょう。

またECサイトのUI改善においては、サイト訪問者にポップアップ型の簡易アンケートを表示し、「商品を比較しづらい」「素材情報が不足している」といった声を集約します。これによりコンバージョン率を改善するといった方向性も考えられます。

飲食業界の市場調査例

飲食業界では店舗の立地や客層、提供メニュー、価格帯など非常に多くの要素が来店意欲や満足度に影響します。そのためエリアごとの顧客属性や競合状況を踏まえた調査が欠かせません。

あるチェーンカフェを例に挙げると、新規出店に先立って周辺エリアの通行量と年齢層を観察調査で確認します。その後近隣店舗の利用者を対象に「なぜその店を選ぶのか」「価格帯への満足度」などをヒアリングし、自店舗のコンセプト設計に反映するといったアプローチが考えられます。

さらにメニュー改定時にはレジ横で簡単な紙アンケートを実施し、季節限定メニューへの興味やボリューム感、価格感に対する評価を収集します。店頭でのスピード感ある調査とWebアンケートによる広範囲な定量調査を併用することで、意思決定の精度とスピードを両立させることができるでしょう。

IT・SaaS業界の市場調査アプローチ

SaaSやITサービスの領域では利用者の課題や業務フローに対する深い理解が必要となるため、ペルソナベースでの調査設計が重視されます。

例えばBtoB向けSaaSを展開する企業を例に挙げると、初期導入検討段階の企業と既存ユーザーの2軸でアンケートとインタビューを実施します。前者では「導入の壁」を、後者では「定着しない理由」を探ることで、顧客のライフサイクルに応じたボトルネックを特定するというアプローチが考えられます。

またUI/UX改善に関する調査では、特定の操作ステップでの離脱率が高かった画面に注目し、ユーザーに操作画面を共有しながらヒアリングを行う「リモート・ユーザビリティテスト」を実施することで、表面的な不満ではなく具体的なつまずきポイントを可視化することも可能になります。

SaaS業界では継続利用やアップセルにつながるヒントが「行動の裏にある理由」に隠れているため、ログデータとユーザーの声を組み合わせた調査設計が成果に繋がるでしょう。

新規事業立ち上げにおける市場調査の活用例

新規事業では既存の知見や前提がない状態からスタートするため、ゼロベースで仮説を構築し検証していく調査サイクルが求められます。

あるスタートアップを例に挙げると、サブスクリプション型の健康食品サービスを構想する段階でSNSでの反応調査からスタートします。簡易的なLPと広告出稿を組み合わせて「クリック率」「問い合わせ内容」を収集し、実需があるかどうかを定量的に検証するアプローチも有効でしょう。

さらに早期登録者を対象にZoomインタビューを実施し、「なぜ興味を持ったのか」「毎月支払うならどんな付加価値が必要か」といった定性的な情報を深掘りします。結果として「栄養価の分かりやすい表示」や「生活習慣に合わせた提案」など、開発ロードマップに直結する具体要件を整理することができます。

このように新規事業ではまず小規模な検証型調査を繰り返すことで、市場ニーズを確実に捉えながら開発を進めるアプローチが有効です。

市場調査でよくある失敗と解決策

市場調査でよくある失敗と解決策

市場調査は意思決定に直結する重要なプロセスですが、設計や運用にミスがあると誤った方向性で判断を下してしまうリスクがあります。ここからは調査初心者から中級者が陥りやすい失敗パターンと、それを未然に防ぐための具体的な対策を紹介します。

目的不明確による設計ミス

市場調査で最も多く見られる失敗の一つは、「何を知りたいのか」が曖昧なまま調査を始めてしまうことです。例えば「ユーザーの満足度を知りたい」と言いながら具体的にどの要素に対して満足しているのか、あるいはどの点に改善の余地があるのかといった項目を分解せずに漠然とした設問を並べてしまうと、得られるのは抽象的で曖昧なデータにとどまってしまいます。

このような失敗は、調査の目的が単なる「情報収集」にすり替わってしまっている場合に起こりがちです。調査を行う前の段階で関係者としっかりと共有すべきポイントは二つあります。

一つ目は「この調査結果をもとに、何を判断したいのか」という視点です。例えば、今後の施策をどう進めるか、ターゲットをどう選定するかといった実務的な判断の材料としての役割を明確にするという意味です。

二つ目は「調査結果がどのように活用されるのか」という点です。例えば社内の改善提案資料として使うのか、新商品の企画会議で検討材料とするのかといった具体的な活用シーンを想定しておくことが重要です。

これらの目的が明確になれば、自ずと設問の構成や順序、聞くべき内容の粒度、さらには対象者の選定までが論理的に導き出されます。調査は目的に応じて設計されてこそ意味を持ち、実務に活かせる有効なデータを得ることができるのです。

調査対象の選定ミス

もうひとつの典型的な失敗が調査対象者の設定ミスです。「とりあえず広く聞いてみよう」として無作為に選定してしまうと、実際に知りたかった層からの反応がほとんど得られず、本当に必要なインサイトを見落とす結果につながりかねません。

例えば離脱者の理由を探る調査でアクティブユーザーを対象にしてしまえば、当然ながらポジティブな声ばかりが集まります。これでは改善ポイントは見えてきません。

このようなミスを防ぐには「誰の声が一番価値を持つか」を明確にしたうえで、対象をセグメント化することが重要です。場合によっては「現ユーザー」「元ユーザー」「未体験層」のように層を分けて調査を実施し、比較分析する設計も検討すべきです。

質問項目の設計不備

質問文の設計に問題があると回答者が質問の意図を正しく理解できず、バイアスや混乱を引き起こす原因になります。特に注意が必要なのは、1つの設問の中に複数の要素が含まれている場合です。このような設問は、回答者に「どちらについて答えればよいのか分からない」という戸惑いを与えてしまい、結果として信頼性の低いデータになってしまいます。

例えば「サービスの価格と機能に満足していますか?」という設問は、価格と機能という異なる評価軸を1つにまとめて尋ねているため、回答者がどちらに対して答えているのかが不明確になります。このような場合は、「価格についての満足度」「機能についての満足度」といった形でそれぞれを個別に質問することでより明確で分析しやすいデータを得ることができます。

また選択肢の設計にも注意が必要です。中立的な立場を選べる選択肢がない場合、回答者にとっては無理に肯定または否定の立場を選ばされることになり、実際の意見と乖離した回答が集まる可能性があります。回答者の意思を正しく反映するためには、「どちらともいえない」や「わからない」といった中間的な選択肢を設けることが重要です。

調査票の完成後には、必ず実際の回答者の視点で設問を読み直し、内容に過不足がないか分かりにくい表現がないかを確認することが必要です。設問設計の段階で丁寧に見直しを行うことで、調査全体の信頼性と有効性を大きく高めることができます。

分析結果の活用不足

調査の目的を達成しているにもかかわらず、その結果が実際の業務や施策に活用されないまま終わってしまうケースは少なくありません。例えば定量データを集計しただけで報告書の作成にとどまり、次のアクションにつながらない、あるいは情報が多すぎて何をどう活用すればよいのか判断できないといった状況がよく見られます。

こうした問題が発生する背景には、分析の段階で「施策にどうつなげるか」という視点が欠けていることが挙げられます。単に数値をまとめるだけでは不十分で調査結果をもとに「何が分かったのか」「それに対してどのような対応が求められるのか」といった解釈や提案までを行う体制が不可欠です。

例えば購入率が高いセグメントにはどのような共通点があるのか、サービスから離脱したユーザーはどのような点に不満を抱いていたのか、またA案とB案のどちらが好まれたかという調査結果から具体的にどのような施策が導き出せるのかを考えることが重要です。

このように、明確な問いを持ちながらデータを読み解いていくことで調査結果は単なる情報の集まりではなく意思決定を支える「使える情報」へと変わります。調査後の分析と活用にまで責任を持つ姿勢が必要となります。

参照:マーケティング効果測定を正しくできていますか?指標や手法、ツールをわかりやすく解説 | Strh株式会社(ストラ)

まとめ

市場調査は新商品開発や既存サービス改善の精度を高めるために欠かせないプロセスです。とはいえ調査手法の選定や設問設計、対象者の抽出、分析・活用まで一貫して対応するのは簡単ではありません。

本記事では、調査の全体像から手法別の特徴、業界別の活用事例、よくある失敗とその回避策までを解説しました。特にユーザー理解に直結する調査を行うことで単なる仮説や勘に頼らない説得力ある意思決定が可能になります。

ストラでは調査設計から分析活用まで一貫してご支援することができ、市場調査結果をもとにしたマーケティング戦略の策定もご支援可能です。

市場調査やデータ活用についてお困りのことがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。

また、ストラのBtoBマーケティング戦略策定やマーケティング伴走支援、データ分析支援について詳しく知りたい方はこちらのページも合わせてご覧ください。

市場調査のお困りごとはプロにご相談ください

  • 市場の変化や顧客の潜在的なニーズを把握したいが、どうすればいいのかわからない
  • さまざまな市場調査方法があって、どの方法を選ぶべきかを決定するのが難しい
  • 収集したデータの質が不安である
このようなお困りごとがありましたら、ぜひとも私たちStrhにご相談ください。マーケティングやCRM・MA・CDP等のマーケティングテクノロジーに精通したコンサルタントが、御社に最適なソリューションをご提案させていただきます。まずはお気軽にお問合せください。 市場調査についてまずは相談する

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀

大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。

▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Marketing Cloudアドミニストレーター
Salesforce認定Marketing Cloud Account Engagementスペシャリスト
Salesforce認定Marketing Cloud Account Engagement コンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント
Salesforce認定Data Cloudコンサルタント

この記事をシェアする

x facebook
To Top