この記事でわかること
- 3C分析の基本的な概念
- 3C分析を実施する主な目的とタイミング
- 分析のメリットとデメリット
- 3C分析を行う手順
- 3C分析の実践例
- 3C分析を効果的に行うための具体的なコツ
- 3C分析実施後のアクション
執筆者 取締役 / CTO 内山文裕
マーケティング環境分析を行う際に利用することができるフレームワークである3C分析。言葉は知っていても実際に行う際にどのように行うべきか、押さえておくべきポイントはないかなどで悩まれる方も多いかと思います。
- 3C分析の基本を押さえたい
- 3C分析のやり方や実践例を知りたい
- 3C分析のコツを知りたい
本記事は上記のような思いを抱いている方に向けて、3C分析の概要やメリット、やり方などを分かりやすく解説します。
3C分析の実践例や効果的に行うコツなども併せてご紹介していますので、ぜひ最後までご確認ください。
また、BtoBマーケティングの基本的な考え方や戦略策定のプロセスから知りたい方はこちらの記事も併せてご覧ください。
参考:BtoBマーケティングとは?戦略の立て方やそのプロセス、成功事例までプロが解説
1.3C分析の概要
まずは3C分析の概要や、どういったタイミングで行うのかなどについて解説します。
3C分析とは
3C分析とは、Customer(顧客・市場)・Competitor(競合)・Company(自社)の3つの観点から、自社を取り巻く環境を分析する手法です。
3C分析は以下のような図で表されることが多くなります。
経営戦略やマーケティング戦略を立案する際に活用されるフレームワークであり、シンプルに環境を分析できるため、様々な企業で活用されています。
3C分析を実施するタイミング
3C分析は、先述のとおり経営やマーケティングなどの戦略立案プロセスにおける環境分析を行うタイミングで実施します。
戦略立案プロセスにおいて、3C分析は以下のように早いタイミングで行うことになります。
3C分析などによって得られた示唆や情報に基づき、STP分析やマーケティングミックス策定などの各ステップを進めていくことになるのです。
3C分析を行う目的
3C分析を行う目的は、マーケティングにおける成功要因や戦略の方向性を探ることです。
自社の強みや状況だけを考慮して戦略を検討しても、その戦略が本当に顧客や市場に求められているのかは勿論、競合と差別化できているのかも分かりません。
その点3C分析を行うことで、各Cがこれからどういった動きをするのかなどを予測し、競合の強みや顧客ニーズを整理できるため、客観的かつ効果的な戦略立案に繋げることができるのです。
3C分析である程度方向性が固まることで、市場の細分化やターゲット顧客選定などの精度もより一層高まるでしょう。
2.3C分析のメリット・デメリット
続いて3C分析のメリットとデメリットをご紹介します。
3C分析のメリット
メリットとしては以下のような点が挙げられます。
メリット①:シンプルに分析できる
一つ目に挙げられるのは、シンプルに分析できるという点です。
3C分析では、環境を「市場・顧客」「競合」「自社」という3つの要素で整理します。
環境分析においては様々な情報を収集・分析することになりますが、3C分析は収集すべき情報がこの3つのCに属する情報に絞られるため、シンプルに分析できるのです。
分析の難易度も高くないため、分析に慣れていない方でも比較的扱いやすい分析フレームワークと言えるでしょう。
メリット②:自社の相対的な強みや弱みを把握できる
次に挙げられるメリットは、自社の相対的な強みや弱みを把握できるという点です。
自社について分析を行う際、単独で分析していても、自社の強みや弱みの客観性や相対性が担保できず、実践的な示唆を得にくいと言えるでしょう。
その点3C分析によって、自社だけでなく顧客や競合も含めて分析することで、市場における自社の相対的な強みや弱みが明確になります。
その結果、提供価値や差別化の方向性も明確になり、効果的な戦略立案に繋げることができるのです。
メリット③:差別化の方向性を検討できる
メリットの最後に挙げられるのは、差別化の方向性を検討できるという点です。
3C分析では、自社だけでなく競合の提供している製品・サービスの強み、提供価値なども分析します。
これらの情報と顧客ニーズを重ね合わせることで、競合が対応できていない顧客ニーズなどのヒントも得ることができます。
それらのヒントに加え、自社の持つ強みを活かせそうな領域にも当たりが付けられるため、効率的に差別化の方向性を検討できるのです。
3C分析のデメリット
3C分析のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
デメリット①:MECEではない
デメリットとしてまず挙げられるのは、3C分析は決してMECE(漏れなくダブりのない構造)にはならないという点です。
3C分析では、自社を含めた環境を3つのCで整理しますが、外部環境には顧客・市場、競合だけでなく、様々な要素が含まれています。
MECEであるといった記載のある記事も見られますが、それはPEST分析やファイブフォース分析などによって、外部環境要因を補完しているためです。
元々の3C分析だけではMECEに整理できないので、この点は理解を間違えないようにしましょう。
デメリット②:競合に関する情報を集めにくい
次に挙げられるデメリットは、競合に関する情報を集めにくいという点です。
3Cの内、Company(自社)やCustomer(顧客・市場)に関する情報については、これまでの事業活動を通じて蓄積されているため、比較的収集しやすいと言えます。
しかし競合については、非公開の情報なども多く、重要な情報やデータを十分に集めることができないケースもあります。
その場合は外部の調査会社などを利用するといった対応が必要となり、思わぬ出費が生じる場合があるでしょう。
デメリット③:分析に時間がかかる
分析に時間がかかる点も、デメリットとして挙げられます。
競合に関する情報を集める際に時間がかかることは勿論、それぞれのCの情報を掛け合わせながら示唆を得る作業にも、ある程度の時間がかかります。
マーケティングに関わるメンバーで情報収集と分析を行い、それらの情報から示唆を洗い出して意思決定を行うには、相応の期間が必要になるでしょう。
3.3C分析のやり方
ここからは、3C分析のやり方を4つのステップに分けて確認します。
ステップ①:Customer(顧客・市場)に関する情報を整理する
まずは、一つ目のCであるCustomer(顧客・市場)に関する情報を収集し、整理します。
Customer(顧客・市場)に関する情報としては、主に以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 顧客の持つ顕在・潜在ニーズ
- 顧客の持つ価値観
- 顧客の購買行動傾向
- 顧客の辿る購買プロセス
- 市場規模
- 市場の成長性
- 市場の状況変化
顧客の顕在・潜在ニーズについては、「不足していること」「不満に感じていること」「不快に思っていること」といったネガティブな視点から考えていくことで、マーケティング施策に活かす実践的な示唆を得ることが可能です。
新規製品・サービスを市場へ打ち出す際の戦略においては、市場規模や成長性などの項目を含めて分析を行います。
ステップ②:Competitor(競合)に関する情報を整理する
続いて、Competitor(競合)に関する情報を収集・整理します。
ここでは製品・サービスカテゴリーを同じくする直接競合だけでなく、類似する価値を提供している別製品・サービスカテゴリーに属する間接競合の情報も、併せて収集しなければなりません。
直接競合と間接競合に当たる企業について、以下のような情報を集めていきましょう。
- ビジョンやコンセプト
- 市場におけるポジション
- 製品・サービスを通じて提供している価値
- 製品・サービスの特徴
- 製品・サービスの強みや弱み
- 保有している販売チャネル
- 売上や市場シェア
- 開発力や技術力
- 生産能力
- マーケティング力
先述のとおり競合に関する情報は他のCよりも収集しにくく、想定以上に時間がかかる可能性があります。
自社だけで収集できない場合は、調査会社の活用や過去に在籍していた人材にコンタクトを図るなど、別の角度から情報を集める必要があるでしょう。
ステップ③:Company(自社)に関する情報を整理する
次に、Company(自社)に関する情報を整理します。
Company(自社)に関する情報としては主に以下のようなものが挙げられます。
- 経営理念やビジョン
- 製品・サービスのコンセプト
- 製品・サービスの特徴
- 製品・サービスの相対的な強みと弱み
- 市場におけるポジションやシェア
- 開発力や技術力
- 生産能力やマーケティング力
- 保有する販売チャネル
- アライアンス企業やパートナー企業
自社に関する情報は他のCよりも集めやすいため、様々な情報を抽出してしまいがちですが、過剰に情報を集めすぎると分析効率が悪くなる点は注意しましょう。
ステップ④:戦略や差別化の方向性を検討する
最後に各Cに含まれている情報を組み合わせながら、マーケティングや事業成長における機会はどこにあるのかを検討し、戦略の方向性を検討していきましょう。
また顧客のニーズや競合が提供している価値などを踏まえながら、「どの領域に力を入れることで、自社を独自性かつ競合優位性のあるポジションに置くことができるか」などに当たりを付けることも重要です。
3Cで整理した情報については、SWOTなどの別のフレームワークを用いることで、より具体的に考察できます。
SWOTについては、後ほど改めてご紹介します。
3C分析の実践例
3C分析のやり方を確認いただいたところで、3C分析の流れをシミュレーションしてみましょう。
あくまで3C分析のイメージを掴んでもらうことが目的であるため、登場する企業や状況などは全て架空のものであり、各情報量も少なくしています。
実際はより多くの情報を扱うことになる点は留意しつつ、読み進めてください。
企業情報と前提
Web制作サービスを提供する企業であり、競合との競争を勝ち抜くため、独自性の発揮できるサービスの方向性を見極めたいと考えている
Customer(顧客・市場)
- シンプルなWebサイトであれば、無料作成ツールを利用して自社で構築できるが、オリジナリティを担保しにくいという課題を感じている
- 質の高いWebページの原稿制作をしてくれる業者が少なく、結局自社で用意している
- Webサイト上で自社のブランディングを行いたいものの、どういった点を訴求すべきかわからない
Competitor(競合)
- Webサイトを無料かつ簡単に作成できるツールがあるが、フォーマットが共通しているため、独自性のあるWebサイトは構築しにくい
- Webサイト構築と併せて、ページ原稿のライティングも代行している企業もあるが、あくまでオプションのような位置付けであるため、ページ原稿自体のクオリティはそこまで高くない
- ブランディングといった観点も踏まえたWebサイト制作を訴求している企業はない
Company(自社)
- 現在はWeb制作サービスのみを提供している
- コンテンツ制作会社から移籍してきたメンバーが在籍している
- ブランディングに関する資格を持つディレクターがいる
得られた示唆と戦略の方向性
- 無料作成ツールでは「オリジナリティのあるWebサイトを作りたい」というニーズを満たせない
- 競合はクオリティの高いページ原稿までは対応していない
- 競合はブランディングがしたいというニーズには応えられていない
- ブランディングができるWeb制作会社としてポジションを築く
- ライティングスキルが高い人材によるページ原稿の制作代行サービスの提供
- ブランディングのノウハウを生かしたWebサイトやページ原稿作りを行う
4.3C分析を効果的に行うためのコツ
次に3C分析を効果的に実施するためのコツを6つご紹介します。
コツ①:各Cにおける情報を十分に集める
一つ目に挙げられるのは、各Cにおける情報を十分に集めるという点です。
3C分析を行う際、各Cに関する情報があまりにも少ないと、分析によって得られる示唆の有効性が下がってしまう可能性があります。
そのため各Cに含まれる情報は十分に集めることが重要になります。
ただし情報は多ければ多いほどよいというわけではなく、戦略立案の目的に適した情報に絞って集めることもポイントです。
新規製品・サービスの市場投入なのか、それとも既存製品の拡販なのか、戦略の目的によって集めるべき情報が異なるので、この点は留意しておきましょう。
コツ②:分析の順序にこだわり過ぎない
次に挙げられるコツは、分析の順序にこだわり過ぎないという点です。
先に紹介したステップでは「Customer⇒Competitor⇒Company」の順に、情報を整理しました。
この順序で分析したのは、顧客ニーズや競合が提供している価値などを理解した上で自社情報を整理する方が、具体的な方向性を効率的に導き出しやすいからです。
とはいえ、あくまで各情報を集めて整理することに意味があるため、「自社の情報収集から取り組んだ方がスムーズに進む」といった状況なのであれば、順序を入れ変えても問題はありません。
コツ③:客観的な情報を収集する
客観的な情報を収集するという点も、3C分析における重要なコツです。
自社や顧客に関する情報を整理する際、どうしても主観や想像が入りがちになります。
しかし、マーケティングにおける成果に繋がる有効な示唆を導くためには、事実ベースの情報を集める必要があるのです。
そのため、これまでのマーケティング活動で得られたデータなどを中心に、客観的な情報を集めるようにしましょう。
コツ④:重なり合う部分に注目する
次に挙げられるのは、差なり合う部分に注目するという点です。
3つのCをそれぞれ単独で分析しても何の意味もなく、各Cが重なり合う部分に注目することで、より精度の高い示唆を抽出できます。
上図にように重なり合いを意識して、各情報を組み合わせながら状況を整理し、戦略立案の方向性を検討していくのです。
重なり合う部分に加えて、「誰も満たせていないニーズ」や「誰も気づいていないニーズや機会」にも意識を向けることで、差別化に繋がる方向性を見つけやすくなるでしょう。
コツ⑤:他の分析フレームワークで得られた情報を組み合わせる
他の分析フレームワークで得られた情報を組み合わせるという点も、コツとして挙げられます。
先述のとおり、3C分析を単独で利用した場合、外部環境面を中心に漏れが生じます。
そのためPEST分析やファイブフォース分析といった、別の分析も並行して行い、それぞれの情報を組み合わせることが重要になるのです。
これらのフレームワークで得た情報によって補完することで、より一層効果的な戦略立案に繋げられると言えるでしょう。
コツ⑥:BtoBの場合は顧客の3Cも分析する(6C分析)
最後にご紹介するコツは、顧客の3Cも分析するという点です。
BtoB領域の製品・サービスを提供している場合は、顧客企業における3Cも確認する6C分析に取り組むことで、顧客に関する深い洞察が得られます。
顧客の3Cまで整理するのは相応の工数がかかりますが、実施することによって顧客を深く理解し、想定していなかったニーズなども掴める可能性があるため、ぜひ併せて行うようにしましょう。
5.3C分析の後にすべきこと
最後に3C分析の後にすべきことについてご紹介します。
SWOT分析
SWOT分析とは、環境分析に用いられるフレームワークであり、以下の図のような形で表されます。
3C分析で整理した情報を、上の図にあるマトリックスに当てはめていくことで、3Cとはまた別の角度から現状を整理できます。
それぞれの領域に該当する要素を当てはめていくことで、具体的な戦略の方向性を探っていくことができるでしょう。
参照:【図解】SWOT分析とは?目的や実施方法、ポイントなどを徹底解説
STP分析
3C分析やSWOT分析を実施した後は、STP分析へと入ります。
STP分析は以下のプロセスによって構成されます。
- Segmentation(セグメンテーション):市場の細分化
- Targeting(ターゲティング):ターゲットの選定
- Positioning(ポジショニング):自社ポジションの明確化
STP分析を通じてターゲット顧客の選定やニーズ分析、差別化や競合優位性を発揮するためのポジションを探っていくことになるのです。
参照:顧客セグメントとは?作り方や活用の流れ、成功事例を分かりやすく解説
マーケティングミックス策定
最後はマーケティングミックスの策定を行います。
ターゲット顧客や提供価値などを踏まえ、製品・サービスを顧客に届けるための戦術:マーケティングミックスを検討していくのです。
マーケティングミックスは、4Pと4Cの二つの視点から策定します。
4P(企業側視点のマーケティングミックス)
- Product:自社が提供する製品・サービス
- Price:製品・サービスの価格
- Place:流通チャネル
- Promotion:広告宣伝
4C(顧客側視点のマーケティングミックス)
- Customer Value:製品・サービスを通じて顧客が得られる価値
- Customer Cost:顧客が負担するコスト
- Convenience:入手しやすさ
- Communication:顧客とのコミュニケーション方法
マーケティングミックスを考える際、4Cだけを用いるケースも多いですが、その場合顧客側からの視点が抜け、効果的な戦術を構築できない可能性があります。
そのためマーケティングミックスを策定する際は、4Pと4Cの両面から検討していかなければなりません。
参照:マーケティングミックスとは?フレームワークやポイント、活用事例などを解説!
参照:マーケティング戦略とは?立案手順や役立つフレームワーク、事例まで解説
6.まとめ
今回は3C分析をテーマに、概要やメリット、分析の手順やコツなどをまとめてご紹介してきましたが、いかがでしたか。
マーケティング戦略を立案する際、自社だけにフォーカスして検討しても、顧客に響く施策を企画できる可能性は低いでしょう。
その点3C分析を行うことで、顧客ニーズや競合製品・サービスも踏まえ、自社の強みや弱みなどを整理できるため、効果的な戦略立案に繋げられるのです。
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