BtoBマーケティングのKPI設計についてプロが徹底解説

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BtoBマーケティングのKPI設計についてプロが徹底解説

この記事でわかること

  • 混合しがちなKPIとKGI、KSFの違いや関連性について
  • BtoBマーケティングにおけるKPI設計プロセス
  • BotBマーケティングにおけるKPI設計のポイント

執筆者 杉山元紀

BtoBマーケティングを推進しその成果を正しく出すには、正確で効果的なKPIの設計が不可欠です。

しかし、多くの企業はマーケティング指標のうち、どのKPIが真に事業の成長と目標達成に貢献しているかを識別することが難しいと考えられているでしょう。

この記事では、BtoBマーケティングの目的を明確にし、戦略的な意思決定を導くためのKPI設計の基本から応用までを徹底解説します。BtoBマーケティングの成功への道は明確な目標設定から始まりますが、適切なKPIの選定と分析によって、その道のりをより確実なものに変えることができるでしょう。

本記事では、KPI設計の重要性や基本的な設計プロセス、ポイント、また代表的な施策毎のKPI例など、明日から現場でも応用できる内容を徹底解説いたします。

また、BtoBマーケティングの基本的な考え方や戦略策定のプロセスから知りたい方はこちらの記事も併せてご覧ください。

BtoBマーケティングとは?戦略の立て方やそのプロセス、成功事例までプロが解説 

KPIとは?

KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)とは、組織や事業、プロジェクトの目標達成度を測定するために用いられる定量的指標です。これにより、事業やプロジェクトを成功に導くための重要な要素が明確になり、組織や事業・プロジェクトの戦略的な方向性と成果の評価が可能になります。

KPIとよく混同されるKGIやKSFとの違い

KPIとは

KPIとよく混同される言葉としてKGIやKSFがあります。実際の現場でもこれらの言葉の定義が曖昧であったり、混同して利用されることも多いので注意が必要です。ここではそれらの違いについて紹介します。

KGIとは

KGI(Key Goal Indicator、重要目標指標)は、企業や組織が設定したゴールに対する目標達成度を測定するための指標です。

KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)との主な違いは、KGIが長期的な組織や事業、プロジェクトのゴール達成を反映するのに対し、KPIは短期〜中期的なパフォーマンスや目標達成の進捗を測定する指標であることです。

つまり、KPIはKGIに向けた具体的な行動やプロセスの成果を示すために設定され、KGI達成のための道筋を示すステップとして機能します。

KSFとは

KSF(Key Success Factors、成功の鍵となる要因)は、組織や事業、プロジェクトが目標を達成するために特に必要な活動や条件を指します。

KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)との違いは、KSFが成功を実現するために重要な要素やプロセスを特定するのに対し、KPIはそれらの要素やプロセスが目標達成にどの程度寄与しているかを測定する具体的な指標です。

つまり、KSFは成功に必要な基本条件や最重要アクションを明らかにし、KPIはその成功に向けた進捗や成果を数値化して追跡するための指標です。

BtoBマーケティングにおいてKPI設計を行うべき理由

ここでは改めてBtoBマーケティングにおいてKPI設計を行うべき理由を3点ご紹介します。

業務やマーケティング施策の評価を行い目標値に対して的確で迅速な改善・投資活動を行うため

KPI設計を行うことで業務や施策の効果を正確に評価し、目標達成に必要な改善や投資活動を迅速に行うことが可能になります。

具体的にはKPIを設定することで、業務やマーケティング活動の成果を具体的な数値で把握し、目標とのギャップを明確にすることができます。ギャップが明確になると、そのギャップが生じた原因が特定でき打ち手の修正や、リソースの再配分をより迅速かつ的確に行うことが可能になり、勘と経験に頼ることなく合理的にKGI達成に向けたマーケティング活動を行うことができます。

個人レベルで日々の業務が目標達成にどう影響するかを意識できるようになるため

KPI設計を通じて個々のメンバーが自身の日々の業務が組織全体の目標達成にどのように寄与しているかを理解し、意識することが可能になります。

このアプローチにより、個人は自分の責任範囲とその成果がビジネスの大きな絵にどのように結びついているかを把握でき、モチベーションの向上と生産性の増加に繋がることが期待できます。

また、自己の業務による影響を明確にすることで、より責任感を持って取り組み、効率的な改善提案やプロアクティブな業務実行が促進されるということも期待できるでしょう。

統一された定量指標で部門及び部門メンバーの評価が行えるため

KPIを設計することで、部門やそのメンバーを統一された定量指標で評価できるようになります。そうすることで組織全体で共有される明確なパフォーマンス基準を提供することができ、公正かつ透明性のある評価プロセスを実現することができます。

それによって、各部門や個人が目標に対してどれだけ貢献しているかを正確に把握し、優れた実績を達成したメンバーを適切に認識し、評価することが可能になるでしょう。

BtoBマーケティングにおけるKPI設計の基本的なプロセス

BtoBマーケティングにおけるKPI設計の基本的なプロセス

①KGIを定義する

組織や事業、プロジェクトのゴール地点の目標を表すKGI(Key Goal Indicator)の設定は、ビジネスの長期的な成功を図るためのビジョンやミッションに基づいて行います。このステップでは、組織や事業、プロジェクトが最終的に達成したい成果を明確にし、それを達成するための主要な目標を定義します。

■KGI設定例

  • 年間売上成長率20%達成:企業の成長を示す直接的な指標として、売上の年間成長率を設定します。
  • 2年で市場シェアの5%増加:特定の市場における競争力を高めるための目標として、市場シェアの拡大を目指します。
  • 顧客満足度95%達成:長期的な顧客関係を構築し、ブランドロイヤリティを高めるために、高い顧客満足度を目指します。
  • 新規顧客獲得数を昨年対比20%増加: 成長戦略の一環として、新規顧客獲得を通じて事業の基盤を拡大します。

②KGIのうち最も重要な成功要因であるKSFを特定する

設定したKGIを実現するために最も影響力が大きい要因を特定するステップです。このステップでは、KGI達成に不可欠な条件や活動を明らかにし、焦点を当てるべき具体的な領域を定義します。

■KSFの設定例

  • 年間売上成長率20%達成:製品の差別化、販売チャネルの最適化、顧客サービスの向上。
  • 市場シェアの5%増加:競合分析に基づく戦略策定、ブランド認知度の向上、効果的なマーケティングキャンペーン。
  • 顧客満足度95%達成:高品質な顧客サポート、顧客フィードバックの積極的な収集と改善への反映、顧客体験の継続的な最適化。
  • 新規顧客獲得数を昨年対比20%増加:セグメント毎のターゲティング広告の強化、ターゲットセグメント顧客基盤を有している代理店とのアライアンス締結、新規顧客向けのインセンティブ提供。

③KGIで設定した指標を構成する要素を分解する

KGIで設定した指標を構成する要素を分解するこのステップでは、目標を達成するために必要な具体的な活動や成果に目標を細分化します。

これにより、目標の達成に寄与する各要素がどのように機能しているかを明確にし、目標達成のための進捗状況をより詳細に追跡できるようになります。

例えば、年間売上成長率の増加を目標とする場合、それを達成するための具体的な要素には「新規顧客獲得数の増加」や「既存顧客からの売上の増加」などがあり、更にそれらに対する具体的な活動が紐づいているでしょう。各要素に対して具体的な目標を設定し、それらの進捗を追跡することで、必要に応じて打ち手を調整し、目標達成に向けての行動を最適化することができます。

④分解した要素(指標)からKPIを定義する

分解した要素からKPIを定義するこのステップでは、各活動や成果が全体の目標達成へどのように影響しているかを定量的に評価するための具体的な指標を設定することが目的です。

このステップは、目標達成に必要な行動や成果を詳細に把握し、それらが全体の目標に対してどの程度貢献しているかを明確にするために重要です。

たとえば、新規顧客獲得数の増加を目標の一つとした場合、KPIには「特定期間内に獲得した新規顧客の数」や「新規顧客獲得コスト」などが含まれるかもしれません。これにより、組織は各活動の効果を測定し、必要に応じて戦略を調整できます。

BtoBマーケティングのKPI設計における3つのポイント

BtoBマーケティングにおけるKPI設計3つのポイント

ここからはKPIを設計するにあたって押さえておくべき3つのポイントを分かりやすく解説します。

KGIとの関係が明確であり定量化されていること

KPIを設計しても最終ゴールであるKGIとの関係性が不明確であれば、目標達成に向けた進捗の管理と目標に対する貢献度が不明確ということなので、これではKPIの意味がありません。

また、定量指標として設定されているKGIを達成するためのプロセス指標であるKPIについても、当然ながら定量的に測定できることが重要になります。

KPIの数は最大5つ程度に絞り込むこと

現場でもよくあるケースとして、追いかけるべきKPIが多すぎるという課題があります。KPIは設定するだけでなく、KPIを改善するために予実ギャップの分析や打ち手の検討・実行など、KPI改善を行うために様々な作業が発生します。

多く設定し過ぎているがゆえに、リソースやコストの観点から結果的に一部しかKPI改善が行えていないなどの状態はよくあります。

こういった「絵に描いた餅」状態を避けるため、KPIはKGIを達成するために重要な要素を指標化したものであるので、KGI達成に向けて重要なKPIは何かをよく検討して設定することが望ましいです。

マーケティング活動が評価できるレベルまで分解されていること

マーケティング活動が評価できるレベルまでKPIや構成要素が分解されていることは、BtoBマーケティングのKPI設計において重要です。これにより、マーケティング活動の各要素が具体的な最終的な成果にどのように貢献しているかを明確にできます。

活動レベルでの分解は具体的な改善点の特定や、効果的な打ち手の迅速な実施、戦略全体の成功、進捗度合の評価を可能にします。これにより、組織や事業、プロジェクトは目標達成に向けてより精密な計画と実行が可能になります。

BtoBマーケティングにおけるKPI例

ここからは具体的にBtoBマーケティングにおけるKPI例をいくつか紹介いたします。現場ですぐに使える内容があれば、是非ご活用いただければと思います。

営業・マーケティングプロセス全体におけるKPI例

BtoBマーケティングにおいては営業プロセスと業務プロセスとしては接続しています。営業・マーケティングプロセス全体においては、仮に受注数をKGI指標とした場合、以下のようなKPIが考えられます。

営業・マーケティングにおけるKPI例

営業とマーケティングでモニタリングすべきKPIが異なり、更にマーケテイングは各チャネルごとのプロセスKPIもモニタリングし各施策の運用改善も行う必要があります。

重要なのはマーケテイングも営業も業務としては一連のプロセスの上で活動をしており、部門ごとにKPIを分断して考えるべきではないという点です。

マーケテイング部門は自分たちが獲得したリードがどの程度商談や受注に結びついているのかをウォッチし、投資チャネルの評価や施策の運用改善に繋げるべきですし、営業部門はマーケテイング部門に対して必要なリードの質や量について適切にフィードバックを行いながら、組織全体としてKGIである受注数を追いかける必要があります

ウェビナーにおけるKPI例

コロナ禍以降、マーケティング施策の1つとしてウェビナーを実施する企業も多くなりました。ウェビナーについても目的を何と置くかによってKPIは変わりますが、今回は「ターゲット企業の新規リード獲得数」をKGI指標と置いた場合のKPIについて紹介いたします。

ウェビナーにおけるKPI例

新規リード獲得を目的にしたウェビナーでは、「申込数」をKPIとして設定される場合が多いです。更にSNS広告やメルマガ、オウンドメディアコンテンツなどのウェビナーへの各集客チャネルごとにKPIを更にブレイクダウンしてモニタリングすることで、申込数を最大化するための、施策改善や投資チャネルの評価を行うことができます。

展示会におけるKPI例

新規リード獲得を目的に展示会に出展する場合、KPIとしては以下のような指標が考えられます。ただし、実際にはリード獲得してからの商談化数/率や受注数/率など受注まで含めた全体プロセスとして、KPIを設計することが望まれます

展覧会におけるKPI例

更に展示会においては準備段階で名刺獲得枚数を最大化するために、当日の配置やブース内セミナーへの誘致、声掛け件数などのオペレーションやプロセスKPIを設定する必要があるでしょう。

展示会に出展する際の準備についてはこちらの記事で詳しく解説しておりますので、是非併せてご覧ください。

メルマガにおけるKPI例

見込客に対するホワイトペーパーダウンロードを目的とした場合のメルマガ施策のKPIとして紹介いたします。

メルマガにおけるKPI例

リード数が一定規模以上になれば興味醸成のための情報提供チャネルとして、メルマガの送付も有効になります。ただし、やみくもに送付するだけではなく、各KPIを最大化するための改善施策を意識して運用改善を行う必要があります。

メルマガ施策でよく設定されるKPIである「クリック率」「開封率」を上げるための方法についてはこちらの記事で解説していますので併せてご確認ください。

SNS運用におけるKPI例

SNSの運用も目的によって設定すべきKPIは異なりますが、ここではSNSアカウントからセミナー申込数の増加を目的と置いた場合のKPI例をご紹介します。

SNS運用におけるKPI例

SNSの運用においては投稿数やその投稿に対してのエンゲージメント率、投稿内セミナーリンクのクリック率や、その後の申込率などがKPIとして考えられるでしょう。

ただし、そのアカウントのフォロワーやセミナーテーマも変数として影響しますので、SNS経由でのセミナー申し込みを一つの集客チャネルとして確立するためには一定の運用期間が必要になる場合もあります。

Web広告におけるKPI例

web広告と言っても様々な媒体が存在しますが、ここではリスティング広告において、「コンバージョン数を増加」「コンバージョン単価を下げたい」という2つの目的に対するKPI例をご紹介します。

WEB広告に終えるKPI例

リスティング広告において、「CPAを下げたい」というお題に対して影響するKPIは「CVRを上げる」または「CPCを下げる」が考えられます。

これらのKPIを改善するためには以下のような施策が考えられるでしょう。

■CVRを上げる

  • ランディングページを改善する
  • 広告文を見直す
  • ターゲティングを見直す
  • 成果の悪いキーワードを除外・停止する

■CPCを下げる

  • 品質スコアを上げる
  • クリック単価の低いキーワードを追加する
  • 入札金額を下げる

また、「CVを増やす」というお題に対して影響するKPIは「Impを増やす」「クリック率を上げる」「CVRを上げる」が考えられ、前述した「CVRを上げる」以外のKPIを改善するためには以下のような施策が考えられます。

■Impを増やす

  • キーワードを調査し追加する
  • 部分一致に変更する
  • 日予算を上げる

■クリック率を上げる

  • 広告タイトルやディスクリプションを見直す
  • 画像表示オプションを追加する
  • 構造化スニペットなど広告表示オプションを設定する
  • キーワードを見直す

オウンドメディア運用におけるKPI例

オウンドメディア運用におけるKPI設計は、運用フェーズによって追うべきKPIを変えるべきという点がポイントです。オウンドメディアはその性質上、成果が出るまで一定期間要する施策になります。その過程でいきなりリード数などの目標を設定してしまうと、目標未達状態が常態化し、メディア自体が形骸化してしまうといったことがよく起こります。

例えば弊社オウンドメディアでは立ち上げ初期に関しては様々な指標が考えられる中で、「公開本数」のみにKPIを絞って立ち上げを行いました。そうすることでもちろん数値としてはその他指標もトラッキングはしているものの、チームとしては公開本数だけ追いかけて、公開するまでのプロセスの仕組化などを集中的に行っておりました。それ以降は次のフェーズとしてまた別のKPIを設定しながら運用を行うといった形でフェーズ毎に追うべきKPIを変えながら取り組んでいます。

自社のメディアがどういったフェーズなのかをもとに以下のようなKPIを設定して運用を行いましょう。

・公開本数

・ターゲットキーワードにおける検索順位

・滞在時間

・サイト内CTAクリック数/率

・問い合わせ数

・資料DL数

まとめ

ここまでBtoBマーケティングにおけるKPI設計の重要性やポイント、設計プロセスなどについて紹介させていただきました。

まずはチーム内や部門間で言葉の定義を合わせることから始め、KPIを正しく設計することで、事業成長やプロジェクトの成功に向けて、目標とのギャップを明確に把握でき、迅速に改善活動を行うことができ、取組の評価も行うことができます。

ただし、やみくもに設計しただけでは「絵に描いた餅」になることも多く、意味のある適切なKPIを設計し、それらを組織として追い続けることではじめて事業の成長に繋がります。

本記事を参考に是非皆さまの会社でBtoBマーケティングのKPI設計や見直しを行ってみてください。

ストラではBtoBマーケティングのKPI設計はもちろん、KPI設計含めたマーケティング戦略から実行支援まで一貫したコンサルティング支援を実績を持ったコンサルタントがご支援いたします。

マーケティング活動についてお困り事ございましたら、こちらの問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

執筆者 杉山元紀

大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。

▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント

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