CRM分析とは?基本から8つの分析手法、部門別活用例まで徹底解説

この記事でわかること
- CRM分析とは何か
- CRM分析が必要な理由
- CRM分析の代表的な手法と使い分け方
- CRM分析が機能しなくなる3つの落とし穴
- CRM分析を成功させるためのポイント

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
マーケティングについてのお困りごとはプロにご相談ください
- 顧客データを蓄積はしているが、どう分析したら良いか分からない
- 自社に合った分析方法が分からない
- 分析結果を現場に活用できていない
「誰に・なにを・どのように届けるか」が的確でなければ、どんなに優れたマーケティング施策も成果にはつながりません。「広告費を投下してもLTVが伸びない」「見込み顧客の質にばらつきがある」「リピート購入につながらない」こうした課題の背景には、顧客理解の浅さやデータの非活用が潜んでいます。多くの企業では、CRM(顧客管理システム)を導入して顧客の情報を蓄積していますが、それを十分に活かしきれていないことも多いのではないでしょうか。
そこで注目されるのが「CRM分析」です。蓄積された顧客データをもとに行動傾向や購買パターンを分析し、顧客の解像度を高めることでマーケティングや営業の精度を飛躍的に高めることができます。
本記事ではCRM分析の基本から代表的な分析手法、成果につなげるための実践ポイントまでわかりやすく紹介します。自社のCRM内のデータ活用に課題を感じられている方はぜひ最後まで記事をお読みください。
CRM(顧客管理システム)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
参照:CRMとは?導入メリットや機能、選び方やおすすめツールまで解説
目次
CRM分析とは?
CRM分析とはCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)システムに蓄積された顧客データを活用し、顧客の行動や購買傾向を分析する手法です。顧客一人ひとりのニーズを把握し最適なアプローチを行うことで、マーケティングや営業活動の効果を高めることができます。
そもそもCRMとは顧客との関係を構築・維持・強化するための戦略・戦術やシステムを指します。CRMシステムでは顧客の氏名や所属企業などの基本情報はもちろん、過去の商談履歴、購入履歴、Webサイト上での行動履歴、問い合わせ対応の内容、メールの開封・クリック状況など、顧客にまつわるあらゆるデータを蓄積することができます。こうした情報を部門をまたいで共有し活用することで、より精度の高い顧客対応が可能になります。
例えばある顧客が過去に購入した商品や問い合わせ内容を把握していれば、次回の対応時にその情報を活用し、よりパーソナライズされたサービスを提供することが可能です。これにより顧客との信頼関係が深まり長期的な関係構築につながります。
しかしCRM内のデータを活用できているケースは多くありません。そこで重要になるのがCRM分析です。蓄積されたデータを分析することで顧客の傾向を見える化し、「誰に・何を・どのように届けるか」を最適化します。過去の購買履歴から次に購入しそうな商品を予測したり、問い合わせ傾向から離脱リスクの高い顧客を抽出したりすることで、施策の優先順位やターゲットの精度が格段に上がります。
CRM分析と顧客分析の違い
「顧客分析」と「CRM分析」はどちらも顧客データを使う手法ですが目的やアプローチには少し違いがあります。顧客分析は性別、年齢などの属性や購買履歴といった情報をもとに特定の顧客層の傾向を把握し、マーケティング施策に活かすための手法です。例えば「どの商品をどの年代の女性がよく買っているか」といった情報を分析し、広告や販促に役立てます。
一方でCRM分析はCRMシステムに蓄積された情報を活用して顧客一人ひとりとの関係性を深めるための分析を行います。属性や購買履歴だけでなく問い合わせ履歴や営業活動、メール開封状況など、より広範なデータを使って「この顧客に今どんなアクションをとるべきか」を見極めます。
顧客分析が「誰が何を買ったのか」に着目するのに対して、CRM分析は「どうすればこの顧客との関係を深められるか」にフォーカスしている点が大きな違いです。CRM分析を活用すれば、顧客のライフサイクル全体に寄り添った施策が可能になり、結果としてLTV(顧客生涯価値)の最大化が期待できます。
部門別CRM分析の活用例
CRMに蓄積されたデータはマーケティングや営業だけでなく、カスタマーサポートや経営企画などあらゆる部門で活かすことができ、部門間で連携しながら顧客との関係性を深めていく基盤となります。ここでは各部門におけるCRM分析の具体的な活用例をご紹介します。
マーケティング部門での活用
CRMに記録された購買履歴やWeb行動データ(ページ閲覧、資料DL、メール開封など)を分析することで顧客の興味・関心に応じたキャンペーンやプロモーションの企画が可能になります。例えば過去にセミナーに参加した顧客に限定したフォローアップメールを送る、特定商品に強い関心を示したセグメントにだけ割引オファーを配信するといったパーソナライズ施策が実現できます。
営業部門での活用
CRMに蓄積された商談履歴や購入頻度、過去の問い合わせ内容などを分析することで、顧客ごとのニーズを把握し、より的確な提案が可能になります。例えば定期的に同じカテゴリの商品を購入している顧客に対して、上位商品のアップセルや関連商品のクロスセルを自然な流れで提案するといった施策が代表的です。対応の優先度を判断するために「LTVの高い顧客を抽出して集中アプローチする」といった活用も有効です。
カスタマーサポート部門での活用
過去の問い合わせ履歴やトラブル対応の履歴、NPSスコアなどの情報を活用することで、顧客にとって最適な対応が可能になります。例えば以前クレームを受けた顧客から再度連絡があった場合には過去の対応内容をふまえた上で丁寧な再対応を実施したり、製品の導入初期段階にある顧客に対して先回りでサポートを提供したりすることができます。
経営企画・マネジメント部門での活用
CRM分析は個々の施策や対応だけでなく経営全体の意思決定にも活かされます。例えばどの顧客セグメントが最も収益性が高いか、継続率が高いのはどの属性の顧客かといった分析を通じて事業ポートフォリオの見直しや新規サービス立案の判断材料として使うことができます。また、顧客との接点情報を横断的に分析することで部門ごとの成果の見える化や施策改善にもつながります。
なぜCRM分析が必要なのか?3つの理由
CRM分析が重要視される背景には顧客ニーズの多様化や市場競争の激化があります。CRMに蓄積されたデータを有効活用することでより解像度の高いマーケティング・営業活動が実現可能です。以下の3つの理由からCRM分析の必要性が高まっています。
顧客ロイヤリティの向上
CRM分析を活用することで顧客の嗜好や過去の接点をふまえたパーソナライズ対応が可能になります。これにより顧客満足度を高め、離脱(チャーン)を防ぐ施策へとつなげられます。
例えば「過去の購買履歴をもとに顧客にフォローアップを入れる」「メールを開封していない顧客には別チャネルでアプローチする」といったように、状況に応じた個別対応ができるのがCRM分析の強みです。顧客に「自分のことを理解してくれている」という実感を与えることが長期的な関係維持とロイヤリティ向上につながります。
LTV(顧客生涯価値)の最大化
CRM分析によりLTVの高い顧客の傾向を明確にし、限られたリソースを最も利益を生む層に集中投下できます。頻繁に購入してくれる顧客や継続契約中のユーザーに対しては、優先的に特典を提供したり、アップセル・クロスセルを提案したりすることで1顧客あたりの売上を着実に伸ばすことが可能です。
データドリブンな意思決定
CRM分析は現場の直感や経験則に頼らずデータを基にした根拠ある施策設計を可能にします。例えば「離脱が多いのは初回購入から30日以内」「売上に貢献しているのは特定チャネル経由のリード」といった事実ベースの洞察を得ることで、戦略・施策の見直しが的確に行えます。
さらに、マーケティングや営業だけでなくカスタマーサクセスや経営層にとっても、CRMデータの分析は重要な判断材料になります。属人的な判断から脱却し、再現性の高いPDCAを回すためにもCRM分析は今後ますます重要になります。
CRM分析の代表的な手法8選
CRMに蓄積したデータをどのように分析すればよいのでしょうか。CRM分析にはさまざまな手法がありますが、ここでは特に現場で活用頻度の高い8つの代表的な手法を紹介します。
RFM分析

RFM分析はCRMに蓄積された購買履歴データをもとに顧客を「最近どれだけ取引があったか(Recency)」「どのくらい頻繁に購入しているか(Frequency)」「どれだけの金額を使っているか(Monetary)」の3つの軸でスコア化し、分類する分析手法です。
- R(Recency):最終購買日
- F(Frequency):購買頻度
- M(Monetary):購買金額
CRMに登録されている「最終購入日」「購入回数」「累計購入金額」といったデータをもとに顧客ごとにRFMスコアを付けてセグメントを分けていきます。
これにより「RもFもMも高い=ロイヤル顧客」や、「Fは高いがRが低い=最近動きのない顧客」といったようにアプローチすべき対象が明確になります。
例えばスコアの高い顧客には次回購入を後押しする特別オファーをメールで配信したり、逆に「最後の購入から半年以上経過している顧客」にはフォローアップの電話やアンケートを送って再接点をつくる、というように自動化施策にも活かせます。

デシル分析
デシル分析はCRMに記録された顧客ごとの購入金額をもとに売上上位から10グループ(=デシル)に分け、それぞれのグループが全体売上にどれだけ貢献しているかを可視化する手法です。例えばCRMに蓄積された受注履歴や請求データをもとに1人ひとりの顧客の累計購入金額を集計し、金額の高い順に並べて上位10%、20%…と10等分に分類します。そのうえで各グループが全売上の何%を占めているのかを分析します。
上位デシルの顧客は「特にロイヤリティが高く、利益を支える層」であることが多いため、CRM上でその顧客群にタグやカスタム項目を設定し、以下のような施策に展開できます。
例えば上位10%の顧客に対しては専任担当によるフォローアップや特別割引など、ロイヤルティを維持・強化する施策を設計。中間層には定期購入やクロスセルを促すようなナーチャリングメールを配信。
下位層は離脱リスク層としてアンケートやキャンペーン誘導によってニーズを掘り起こす、といったアプローチが可能です。また各デシルに属する顧客の共通点をさらに深掘りすれば、「高単価商品を購入しているのは〇〇業界の顧客が多い」「購買間隔が短いのは△△チャネル経由の顧客」といった傾向も見えてきます。これらの気づきは新たなセグメント設計や施策立案の出発点になります。
CTB分析
CTB分析は顧客の購買傾向を「カテゴリ(Category)」「テイスト(Taste)」「ブランド(Brand)」の3つの軸で分類し、嗜好や行動パターンを可視化するための分析手法です。
- C(Category):どの商品カテゴリを購入しているか
- T(Taste):どの商品を好んでいるか
- B(Brand):どのブランドを選んでいるか
CRMには商品購入履歴やアンケート情報、Webの閲覧履歴といったデータが蓄積している場合、それらを活用することでよりパーソナライズされたマーケティング施策を実現できます。
例えば「スキンケアカテゴリの商品を定期的に購入し、ナチュラル系のテイストを好み、特定の国産ブランドを選ぶ30代女性」といったように、カテゴリ・嗜好・ブランドの3軸から顧客像を立体的に捉えることができます。
CRM内でこれらの属性を組み合わせてセグメント化すれば「高級志向×Aブランド愛用者」に向けてプレミアムラインの限定キャンペーンを配信したり、「シンプル・機能重視×Bカテゴリ利用者」に向けて利便性を打ち出したメールマーケティングを行うといった、きめ細かなアプローチが可能です。特にOne to Oneマーケティングや一人ひとりの顧客にきめ細かく対応したい企業におすすめの手法です。
CPM分析

CPM(Customer Portfolio Management)分析は顧客を「どれだけ購入しているか」「どのくらい継続しているか」といった観点で分類し、中長期的に優良顧客へと育てていくための分析手法です。RFM分析と似た要素を持ちながらもCPMは現役と離脱の視点を取り入れ、より柔軟に顧客全体を可視化できる点が大きな特徴です。
CPM分析は顧客との関係性のステージや変化を重視し10種類の顧客分類で整理します。特にRFMでは「該当なし」となることの多い離脱顧客も明確に扱えるため、離反防止や再育成のアプローチ設計に非常に効果的です。
CPM分析の10分類
CRMに蓄積された購買履歴をもとに以下のような10の顧客タイプに分類します。
カテゴリー | 分類 | 説明 |
---|---|---|
現役顧客 | 初回顧客 | 直近の期間内に初めて購入した顧客。フォローアップ施策で2回目の購入につなげたい対象。 |
よちよち顧客 | 初回以降、2回以上の購入実績があるが、まだ安定していない段階。継続を促すロイヤリティ強化が有効。 | |
コツコツ顧客 | 定期的にリピートしている顧客。特典設計やパーソナライズで維持・育成を目指す。 | |
流行現役顧客 | 短期間に一定金額以上購入している高アクティブ層。トレンド感度が高く、短期的な売上貢献度が高い。 | |
優良現役顧客 | 長期間にわたり継続的に高額購入しているLTVの高い顧客。最重要層として手厚いケアを行う。 | |
離脱顧客 | 初回離脱顧客 | 初回購入以降、再購入が見られない顧客。再購入キャンペーンやアンケートで再接点を図る。 |
よちよち離脱顧客 | 複数回購入後に離脱した層。商品体験や満足度の確認、離脱理由の深掘りがカギ。 | |
コツコツ離脱顧客 | 安定的にリピートしていたが、最近アクションがない層。再購入のきっかけとなる訴求が有効。 | |
流行離脱顧客 | 一時的に高額購入していたが離れてしまった層。新商品や季節性のあるオファーで再燃を狙う。 | |
優良離脱顧客 | LTVの高い優良顧客だったが、離脱してしまった層。理由分析と個別フォローで関係修復を目指す。 |
クラスター分析

クラスター分析はCRMに蓄積された購買履歴・属性・行動パターンなどのデータをもとに共通点のある顧客を自動的にグループ化(クラスタ化)する分析手法です。AIや統計モデルを使って分類するため、人の感覚では見逃しがちな傾向や隠れた特徴を発見できるのが特長です。例えば「高額商品を年に数回だけ購入する顧客」「新商品の反応が早くSNS経由で購入する層」「少額だが定期的に購入するロイヤル顧客」などさまざまな傾向をもつグループを抽出できます。
従来のセグメント分析では条件を設定して分析する必要がありましたが、クラスター分析ではデータから自然にセグメントが生まれるため、思いもよらない顧客像が見えてくることもあります。
CRMとBIツールを連携させればクラスタの構成や傾向の変化に応じて、キャンペーン施策や営業シナリオを柔軟に見直すことが可能です。とくにパーソナライズされたメール配信や広告設計、ロイヤル顧客の抽出と育成などにおいて、非常に高い効果を発揮する分析手法です。
LTV分析
LTV(Life Time Value)分析とは顧客が企業にもたらす生涯の利益(収益貢献度)を可視化する分析手法です。CRMに蓄積された「購入金額」「購入頻度」「継続期間」といったデータをもとに算出され、顧客ごとの価値を定量的に把握できます。この分析により以下のような判断が可能になります。
- マーケティング投資の優先順位づけ(LTVの高い顧客に広告費を重点配分)
- 営業・サポートの重点フォロー対象の選定(VIP対応や専用サポートを用意)
- 定期課金ビジネスにおける契約継続率や将来収益の予測
- 顧客ごとのLTVに応じた育成シナリオの設計
例えば過去の購買履歴から「LTVが高い見込み顧客」の傾向を分析し、同様の属性をもつ新規顧客に対して最適なナーチャリング施策を設計する、という使い方もできます。
単なる売上ではなく「継続的に価値をもたらす顧客」に目を向けることで、一時的な集客に偏らない持続可能な成長戦略の立案が可能になります。LTV分析はCRM活用の成熟度を高める上で非常に重要なステップのひとつです。
参照:LTV(ライフタイムバリュー)とは?顧客生涯価値の意味から向上施策まで解説
行動トレンド分析
行動トレンド分析はCRMに記録された購買日・アクセス日・アクション履歴などのデータをもとに「顧客がどのタイミングで反応・購買しやすいのか」を可視化する分析手法です。
例えば「平日の朝にニュースレター経由で購入する層」「月末にまとめ買いをするBtoB顧客」「季節イベント前に美容アイテムを購入するリピーター層」など行動の時間的な傾向を把握することで、最適なタイミングでのアプローチやリマインド施策の精度向上が可能になります。
CRMで蓄積された購買日・反応時間帯・メール開封タイミングといった履歴をもとに、マーケティングのタイミング設計やキャンペーンの実施時期を調整することで、無駄な施策コストを削減し、成果を最大化することができます。
売上分析
売上分析はCRM内に蓄積された商品別・チャネル別・時系列別の売上データをもとに、売上構成や推移を俯瞰し、戦略の見直しや次の施策判断に活かす分析手法です。例えば「特定カテゴリの売上が前年同期比で落ち込んでいる」「Webチャネル経由の売上が伸びている一方で、店舗購入のリピート率が低下している」といった傾向を把握することで、販促施策の再設計や価格・流通戦略の見直しに役立ちます。
売上分析は顧客個別というよりはビジネス全体のパフォーマンス評価に位置づけられる分析であり、CRMデータの俯瞰的活用において欠かせない視点のひとつです。LTVやRFMといった顧客単位の分析とあわせて活用することで、より実行性の高いマーケティング戦略を立てることができます。
分析手法 | 主な目的 | 活用例 | 主に使うCRMデータ |
---|---|---|---|
RFM分析 | 優良顧客や離脱リスクの把握 | R/F/Mスコアで顧客を分類し、ロイヤル層や離反層に適したアプローチを設計 | 最終購買日、購入頻度、購入金額 |
デシル分析 | 売上貢献度の高い層の特定 | 上位デシルの顧客に手厚い対応、下位層にナーチャリング施策 | 購入金額(累計・期間内) |
CTB分析 | 嗜好・カテゴリ傾向に基づいたパーソナライズ | 「カテゴリ×テイスト×ブランド」軸でセグメント化し、響く訴求軸を導出 | 購入カテゴリ、商品特性、ブランド履歴 |
CPM分析 | 顧客状態に応じた育成・再活性化 | 10分類に応じてフォロー設計(例:初回離脱者へのアンケート配信、優良現役への特典案内) | 購入回数、購入金額、経過日数など |
クラスター分析 | 潜在的な共通項で顧客をグループ化 | AIが自動で抽出したクラスタに対して専用施策(例:高額低頻度クラスタ向けのリマインド施策) | 属性、購買履歴、行動履歴 |
LTV分析 | 将来価値の高い顧客の優先対応 | LTVの高い層を可視化し、特別オファーや専任対応で強化 | 購入頻度、平均単価、継続期間 |
行動トレンド分析 | 時間軸での行動傾向を把握 | 曜日・時間帯別の傾向を活かし、メール配信やキャンペーンタイミングを最適化 | 購買日、アクセス時間、反応タイミング |
売上分析 | 売上構成の把握と戦略見直し | チャネル別・カテゴリ別の売上を可視化し、施策の再設計 | 商品別売上、チャネル別売上、月別売上など |
どのCRM分析手法を使うべきか?
CRM分析には多くの手法があり用語だけを並べられると「結局、自社はどれを使えばいいのか分からない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
CRM分析は“万能の道具箱”ではありません。目的や課題に応じて適切な手法を選ぶことが、分析結果を施策に活かすための最初の一歩です。
ここでは、「目的別にどの分析手法を選べばよいのか」をひと目で把握できるチャート形式で整理しました。自社の状況に合わせて活用すべき分析手法を見極める参考にしてください。
CRM分析手法の目的別チャート
課題・目的 | 活用シーン | 適した分析手法 |
---|---|---|
優良顧客を把握したい | 継続的に高額購入する顧客を特定したい | ・RFM分析 ・LTV分析 ・デシル分析 |
離脱リスクが高い顧客を発見したい | 購入が止まった顧客を再アプローチしたい | ・CPM分析 ・RFM分析 |
購買傾向や嗜好を知りたい | 商品開発やパーソナライズ施策に活かしたい | ・CTB分析 ・行動トレンド分析 |
顧客層をグループ分けしたい | セグメント別に戦略を立てたい | ・クラスター分析 ・デシル分析 |
売上に貢献している顧客を可視化したい | 上位顧客層に特典やVIP施策を展開したい | ・デシル分析 ・LTV分析 |
行動のタイミングを知りたい | メールやキャンペーンの配信タイミング設計 | ・行動トレンド分析 |
売上の傾向を俯瞰したい | 全体戦略やチャネル戦略の見直しに使いたい | ・売上分析 ・LTV分析 |
実務においては1つの分析手法だけでCRM活用が完結するケースはむしろ稀であり、複数の手法を組み合わせて活用することで、より解像度の高い顧客セグメントを設計することが可能になります。
例えばまずRFM分析によってリピート率や購入金額の高いロイヤル顧客を抽出し、そのうえでCTB分析を用いてそれらの顧客がどのようなカテゴリ・嗜好・ブランドを好むのかを深掘りします。さらにクラスター分析を組み合わせて、類似傾向を持つ顧客群を自然な形でグルーピングすればセグメントごとに最適な施策を設計する土台が整います。
このように段階的かつ多角的に顧客像を描き出していくアプローチこそが、CRM分析を成果につなげるための重要な鍵となります。
CRM分析が機能しない企業に共通する3つの落とし穴
CRM分析は顧客理解を深め、マーケティングや営業施策の精度を高める重要な業務です。しかし多くの企業では、CRMを導入したものの期待した成果が出ていないという悩みを抱えています。その背景にはCRM分析の「活用方法」に関する3つの共通課題が存在しています。
ここではCRM分析がうまく機能しない企業にありがちな3つの“落とし穴”を紹介します。これらに当てはまる点がないか、ぜひ自社の状況と照らし合わせながら確認してみてください。
CRM導入=活用ではない:データ蓄積で止まっている
CRMシステムを導入して顧客の基本情報や商談履歴、問い合わせ履歴などのデータを日々蓄積している企業は多く存在します。しかしその「蓄積されたデータ」が、具体的な施策や戦略に活かされていないケースも非常に多いのが実態です。
特にありがちなのは「データは入っているけど、使われていない状態」。CRMの中に何千件もの顧客情報があっても、それらを定量的に分析したり属性別・行動別にセグメントして活用する設計がなされていない場合、宝の持ち腐れになってしまいます。
CRMは“情報の保管庫”ではなく“顧客解像度を高めるための起点”として活用してこそ、真の価値を発揮します。
部門横断の連携がない
CRMに蓄積されるデータは顧客接点に関わる情報にとどまることが多く、実際のビジネスではMAやSFA、ERPなど、他部門のシステムとも密接に連携することで、より立体的な顧客理解が可能になります。
しかし現場ではマーケティング部門・営業部門・CS部門・経理部門それぞれが、バラバラのツールを使いデータがサイロ化してしまっていることがしばしばあります。その結果、たとえば以下のような“つながらないデータの壁”が生まれます。
- MAツールのスコアが高いリードでも、営業部では活用されていない
- 購入意欲の高い顧客が在庫切れで離脱していたのに、その情報が次回のアプローチに活かされない
CRM分析は部門横断的にデータをつなげる設計があってこそ意味を持つものです。
分析結果が現場で活かされていない
もう一つの落とし穴はCRM分析を「見るだけ」で終わらせてしまっているケースです。CRMやBIツールで綺麗なダッシュボードやレポートを作成しても、それが現場の施策に落とし込まれていなければ成果には結びつきません。
例えば「LTVの高い顧客セグメントが判明した」としても、それに対する優先的なフォロー体制やパーソナライズ施策が設計されていなければ意味がありません。現場担当者が「誰に、どんなタイミングで、どうアプローチするか」まで明確になって初めてCRM分析は効果を発揮します。
特に日本企業においては「分析をして満足してしまう」傾向が強く、アクションまで落とし込むPDCAの“Do”が抜けがちです。
CRM分析は分析して終わりではなく、「誰が・何を・どのように動くのか」まで具体的な施策に接続される必要があります。
CRM分析を成功させるための3つのポイント
CRM分析は単にデータを可視化するだけでなく、ビジネス課題の解決につなげてはじめて意味があります。ここではCRM分析を効果的に活用するために押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
目的と課題の明確化が第一歩
CRM分析はやみくもにデータを眺めても意味がありません。最初に明確にすべきなのは「この分析で何を知りたいのか」「何を改善したいのか」という目的と課題です。
例えば
- 最近売上が伸び悩んでいるが、優良顧客の共通点を把握して育成のヒントを得たい
- 初回購入のみで離脱してしまう人が多く、再購入を促すアプローチの切り口を探したい
- 顧客にどれだけリソースを割くべきかを判断するため、LTVが高い層の傾向を明らかにしたい
こうした目的に応じて選ぶべき分析手法や使うべきデータも変わってきます。目的があいまいなままではデータを見ても施策につながらず、分析が形骸化してしまうリスクもあります。まずは自社のマーケティングや営業活動におけるボトルネックや打ち手の仮説を整理し、「分析を通じて何を判断したいのか」を明確にすることが成果につながる第一歩です。
複数の分析軸を掛け合わせる
CRM分析の強みは顧客にまつわる多面的なデータが蓄積されていることです。だからこそひとつの指標に頼るのではなく、複数の軸を組み合わせて分析することでよりリアルな顧客像を描くことができます。
例えばRFM分析で「F(購買頻度)が高い」顧客を見つけて、どんな商品カテゴリに偏っているか(CTB分析)、どのタイミングで購入しているか(行動トレンド分析)、現役顧客なのか、離脱リスクが高いのか(CPM分析)といった視点を加えることでマーケティング施策にすぐ使えるセグメントが完成します。
さらに施策を実行した後は、その成果を再度データで検証し、PDCAを回していく。分析は一度きりではなく、「施策→検証→改善」を前提に継続することで、CRMの価値を最大限に引き出すことができます。

CRMシステムをMAツールやERPとの連携
CRMに蓄積されるのは主にマーケティングやカスタマーサポートなど顧客接点のデータですが、実際には営業活動(SFA)や受注・在庫・請求など(ERP)といった他部門の情報も含めて、はじめて全体としての顧客理解が実現します。
- SFAと連携すれば「メールの反応率は高いが商談に進まない顧客」を発見し、営業のボトルネックに気づけます。
- ERPと連携すれば「リピート購入を検討していたが、在庫切れで離脱した顧客」に対して、在庫通知などの再アプローチが可能になります。
特にBtoB領域や複雑な顧客接点がある業態では、CRM単体では見えない重要なヒントが他システムの中に眠っていることも少なくありません。顧客を一元的に把握するという意味では、CRMは中心的な存在ですが、SFA・ERP・MAなど複数のデータソースを組み合わせることで「点」ではなく「線」で顧客を理解できるようになります。
データ分析の基本に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
参照:【初めてのデータ分析】ビジネスマン必須スキル!知っておきたいデータ分析の基本
まとめ
CRM分析は顧客理解の解像度を高め、マーケティングや営業活動の精度を大きく引き上げる強力なアプローチです。「誰に・何を・いつ・どう届けるか」を定量的なデータに基づいて判断できるようになれば、感覚や経験に頼らず再現性のある成果が生まれます。
とくに新規顧客の獲得が難しくなりつつある今、既存顧客との関係を強化し、LTVを最大化していくことはあらゆる企業にとって重要なテーマです。そのためにもCRMに蓄積された顧客データをどう分析し、どのように次のアクションに落とし込むかが、競争力の分かれ目になります。
CRM分析をこれから始める方も、すでに取り組んでいるが活用に課題を感じている方も、まずはできる範囲でデータを整備し、小さな分析から始めてみることが大切です。
ストラではマーケティング戦略の策定からCRM分析の基盤であるCRM(Salesforce)構築、施策の実行支援までワンストップでご支援が可能です。データを活かした営業・マーケティング活動に課題を感じている企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
マーケティングについてのお困りごとはプロにご相談ください
- 顧客データを蓄積はしているが、どう分析したら良いか分からない
- 自社に合った分析方法が分からない
- 分析結果を現場に活用できていない

執筆者 代表取締役社長 / CEO 杉山元紀
大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。
▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Marketing Cloudアドミニストレーター
Salesforce認定Marketing Cloud Account Engagementスペシャリスト
Salesforce認定Marketing Cloud Account Engagement コンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント
Salesforce認定Data Cloudコンサルタント