Salesforce Einstein GPTとは?生成AI機能を持った強力な営業・マーケティング支援ツールを紹介
この記事でわかること
- Salesforce Einsteinとは
- Einstein GPTとは
- そもそもGPTとは
- Einstein GPTの特徴
- Einstein GPTの機能
- Einstein GPTの導入時に知っておくべきポイント
執筆者 取締役 / CTO 内山文裕
Einstein GPTは、Salesforceが提供する世界初のCRM向け生成AIです。2023年3月に発表され、顧客関係管理(CRM)の領域に革新をもたらしつつあります。
この記事では、セールスフォースが開発した最新のAI「Einstein GPT」について解説します。セールスフォースが注力する次世代テクノロジーとして期待されるEinstein GPTですが、何ができるのか、実際に業務にどのように活用できるのか、俯瞰的にご紹介いたします。
参照:Salesforce(セールスフォース)とは?製品群や機能、メリット・デメリットを簡単に解説!
目次
Salesforce Einsteinとは
Einstein GPTの詳細に入る前に、Salesforce Einsteinについてご紹介します。
Salesforce Einsteinは、Salesforceが提供するAIプラットフォームです。Salesforce環境内のCRMデータに機械学習、自然言語処理などのAI技術を適用し、営業、マーケティング、カスタマーサービスなどの業務効率化や顧客満足度向上を実現するための機能を豊富に備えています。
主な機能
■Sales Cloud Einstein
- 商談成立可能性の予測
- 次のベストアクションの提案
- 顧客の行動分析
- 案件管理の自動化
■Service Cloud Einstein
- 顧客の意図の理解
- ケース解決時間の短縮
- 顧客満足度の向上
- エージェントの生産性向上
■Marketing Cloud Einstein
- 顧客の購買行動の分析
- パーソナライズされたキャンペーンの作成
- 顧客エンゲージメントの向上
■Analytics Cloud Einstein
- データ分析の自動化
- 予測分析
- 異常検知
これまでも営業・マーケティング・カスタマーサービスにおける意思決定のパートナーとして多様な機能を提供してきたSalesforce Einsteinですが、さらなる進化を遂げた”Einstein GPT”をご紹介します。
Einstein GPTとは?セールスフォース史上最高のAIパートナー
Einstein GPTは、セールスフォースがOpenAIのGPT(大規模言語モデル)をベースに開発した、CRM業務向けのAIアシスタントです。営業・マーケティング・サポートなど、顧客接点を支えるすべての部門で活用できる次世代テクノロジーとして期待が高まっています。
そもそもGPTとは?
GPTは、OpenAIが開発したGenerative Pre-trained Transformerの略称です。Transformerアーキテクチャ*1に基づいた大規模言語モデルであり、膨大なテキストデータで事前学習されています。
GPTの主な機能
- 文章生成: 与えられた文章の続きを生成したり、キーワードに基づいて文章を作成したりすることができます。
- 翻訳: 複数の言語間で翻訳することができます。
- 質問応答: 質問に対して、適切な回答を抽出することができます。
- 要約: 文章を要約することができます。
- コード生成: 自然言語で記述されたコードを、実際のプログラミング言語に変換することができます。
*1 Transformerアーキテクチャ:2017年にGoogle Researchによって提案されたニューラルネットワークアーキテクチャのこと。従来のRNN (Recurrent Neural Network) と異なり、シーケンスデータ処理においてAttention機構を用いることで、並列処理が可能となり、高速かつ高精度な処理を実現した。
Einstein GPTは、Salesforce EinsteinにこのGPTの機能を取り入れることによって、更に進化させたものと言うことができます。
膨大なデータを学習したEinstein GPTは、自然言語での対話が可能で、ビジネスシーンにおける様々な課題解決を支援してくれます。
Einstein GPTの3つの特徴
Einstein GPTには、以下の3つの特徴があります。
- 高度な自然言語処理:顧客との会話や文章を理解し、適切な情報を提供したり、質問に答えたりすることができる
- リアルタイムな文書生成:顧客とのやり取りに合わせて、リアルタイムで文章やメールを作成することができます。
- 1to1の顧客体験: 顧客一人ひとりに合わせた、最適なコミュニケーションを提供することができます。
Einstein GPTは、高度な自然言語処理とリアルタイムな文書生成能力により、顧客との会話や文章を理解し、適切な情報を提供したり、質問に答えたりすることができます。さらに、顧客とのやり取りに合わせて、リアルタイムで文章やメールを作成することができます。
Einstein GPTで実現できること
- 顧客との距離を縮める
顧客一人ひとりに合わせた、最適なコミュニケーションを提供することで、顧客との信頼関係を築き、顧客満足度を向上させることができます。 - 営業マンの負担を軽減する
顧客へのメールや提案書の作成、問い合わせへの回答などを自動化することで、営業マンの負担を軽減し、より重要な業務に集中できるようにします。 - 売上向上
顧客満足度向上や営業効率の向上により、売上向上につながります。
Einstein GPTをうまく業務に組み込むことにより、顧客とのより深い関係構築、業務効率の劇的な向上、そして顧客満足度の飛躍的な向上が期待されます。
Einstein GPTの導入メリットは?業務効率化とCX向上を同時実現
Einstein GPTの最大のメリットは、業務効率化とCX向上を同時に実現できることです。これまで人の手で時間をかけてこなさなければいけなかった作業も、Einstein GPTに指示するだけで短時間でこなすことができるようになります。
Einstein GPTの役割別に想定される活用方法
- 営業担当者
顧客データに基づく営業提案資料の自動作成、商談シナリオの策定、見込み客へのメール自動送信など。 - マーケティング担当者
キャンペーン企画、文案作成、SNS投稿、効果測定、顧客分析などの自動化 - サポート担当者
お問合せへの自動応答、ナレッジ記事の作成、FAQの生成・管理など。
Einstein GPTは担当者の思考を拡張し、創造性を高めてくれます。手作業では難しかった業務が、スピーディーかつ正確に遂行できるようになります。
Service GPTとSales GPT
Einstein GPTの機能として、2023年12月にService GPT、2024年2月にSales GPTがそれぞれ提供開始されました。
Service GPT
Work Summaries(作業要約) | ケースのデータや顧客とのやりとりの履歴から要約を作成する機能。担当者の業務負担低減や引き継ぎ効率を高めることが可能。 対象チャネル:Chat(LiveAgent) |
Service Replies(サービス返信) | Service Cloud上で利用している顧客とのコミュニケーションチャネルにおいて、関連するデータソースをもとにパーソナライズされた返信を生成する機能。 対象チャネル:Chat(LiveAgent)アプリ内・Webのメッセージング(MIAW)、拡張Whtsapp、Facebook Messenger |
Sales GPT
Sales Email | 取引先の情報や過去の商談、活動履歴を踏まえて、取引先へ送信するメールをワンクリックで自動生成する機能。 |
Call Summaries | Web会議の録画、文字起こしの作成と会話内容の要約を自動作成する機能。 |
参考:Salesforce Winter ’24リリースノート Einstein 生成AIの機能
これらの他にも、Marketing Cloud・Account EngagementのMAツール、テキストコミュニケーションツールのSlack、Apex開発時のコーディング補助など、様々なEinstein GPT機能の追加が予定されています。
Einstein GPTの導入を検討する際のポイント
Einstein GPTの導入を検討する際に知っておくべきポイントをご紹介します。
Einstein GPTの利用にはUnlimited Edition以上の契約が必要
Einstein GPTの利用には上位ライセンスである「Unlimited Edition」または「Unlimited Edition+」を契約している必要があります。自社のSalesforce環境でEinstein GPTを利用できるか、まずは契約内容を確認しましょう。
これからSalesforceを導入予定、またはEinstein GPTの導入にあたりライセンスのアップグレードを検討されている方は、以下のエディション別料金表をご確認ください。
ライセンス | 1ライセンスあたりの価格(月額) |
---|---|
Unlimited Edition+ | 60,000円 |
Unlimited Edition | 36,000円 |
Enterprise Edition | 18,000円 |
Professional Edition | 9,000円 |
Essentials Edition | 3,000円 |
Einstein GPTを用いた業務の完全自動化には課題あり
Salesforce EinsteinにGPTの生成AI機能を追加することで非常に強力なツールとなったEinstein GPTですが、”業務を丸ごとAIに任せる”といった完全自動化には課題があります。その一つが、生成AIの抱える「ハルシネーション」という課題です。
ハルシネーションとは、「幻覚」という意味で、生成AIが学習データに存在しない情報を生み出してしまう現象です。
例えば、猫の写真の生成AIが、実際には存在しない「三つ目の猫」の写真を生成したり、文章生成AIが事実と異なる「架空のニュース記事」を作成したりすることがあります。
ハルシネーションが起こる原因
ハルシネーションが起こる原因は、生成AIが学習データに存在する偏りや誤情報の影響を受けやすいからです。生成AIは、学習データのパターンを模倣して新しいデータを生み出すため、学習データに偏りや誤情報が含まれていれば、その影響を受けたハルシネーションを起こしてしまう可能性があります。
この課題は、生成AIを組み込んだEinstein GPTも同様に抱えており、たとえ返信メールや要約を自動生成してくれても、誤った情報を生み出さないために”人の目で確認する”作業が必要です。
そのため現時点では、特に対外コミュニケーションにおいて、業務を完全自動化するまでは至っていないことを認識しておくことが大切です。
まとめ
本記事ではSalesforce製品として進化を遂げてきたSalesforce Einsteinやその進化版のEinstein GPTの概要・詳細、Einstein GPTの導入時に知っておくべきポイントに関してご説明しました。
昨今生成AIのニュースが連日続いていますが、SFA/CRM/MAツールとのシナジーは非常に強力なものだと感じています。この機会に一度Einstein GPTの導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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