BtoB広告の始め方と失敗しない運用方法 | ”カテゴリキーワードの検索数×ターゲット数”で施策の優先度が決まる

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BtoB広告の始め方と失敗しない運用方法 | ”カテゴリキーワードの検索数×ターゲット数”で施策の優先度が決まる

この記事でわかること

  • BtoB広告の過去から現在のトレンドの移り変わり
  • 媒体選定時における優先度の考え方
  • コンバージョン設計のポイント
  • ランディングページの重要性と作成ポイント
  • テストマーケティングにおける予算や媒体、クリエイティブの考え方

執筆者 杉山元紀

BtoBマーケティングやSalesforce活用に取り組む人や企業にスポットを当て、BtoBマーケティングやSalesforce活用のノウハウやナレッジをインタビューする企画「となりのBtoBマーケティング」。

今回はBtoB運用型広告の専門家でもあるアナグラム株式会社の二平燎平さんにインタビューを行いました。前後編に渡ってBtoB企業が運用型広告を始める際の媒体選定や予算、体制などの考え方、テストマーケティングについての具体的な方法などを詳しく伺います。

杉山:弊社が様々なBtoB企業のマーケティング戦略策定や実行支援をさせていただくなかで、各施策のオペレーションフェーズに入ると「BtoBの広告運用はどのように始めればよいか分からない」「どの媒体からスタートすべきか」「どの程度予算や体制を確保すればよいか」「どういった代理店に依頼すればよいか、内製でやるべきか」といったお声を、特にスタートアップや大企業の新規事業部門、これまで広告運用をされてこなかった地方の中規模企業のお客様からよくいただきます。

このように多くの企業が抱えるBtoB広告についての疑問を、私が顧客目線で二平さんにぶつけさせていただきたいなと考えております。

まずは簡単にアナグラムさんの事業内容と二平さんの自己紹介をお願いできますでしょうか。

二平様:アナグラム株式会社でマネージャーをしております二平と申します。

弊社は運用型広告を軸としたマーケティング支援をさせていただいており、BtoBやD2Cなどメンバーに強みが紐づいていて様々なビジネスを支援させていただいております。

弊社はユニット制の組織体制をとっており、現在私の配下に17名程が在籍していまして、チームリーダーと連携して各メンバーが担当している案件をモニタリングしながら、新規案件の開拓を行ったり私自身も案件を直接担当しています。

また、特にBtoBの広告運用に知見があるので、全社的にBtoB案件を支援したり、セミナーに登壇させていただいてます。

今後のBtoB運用型広告のトレンド

杉山:ありがとうございます。インターネット広告が世に出始めて約30年経過し、媒体も急激に増加していくなかで、今のBtoB広告における大きなトレンドとして過去5年10年と現在でどのように変化してきたのかと、今後どのように変化していくであろうという見立てを教えていただけますでしょうか。

二平様:検索広告やディスプレイ広告から始まり、その後Facebook広告などが出てきたと思います。Facebookが2013年から15年あたりで勢力を増して、BtoBでもFacebookを活用した広告運用を実施する流れが近年増しているかなと感じております。

コロナウイルスがBtoB広告にとっても大きなターニングポイントだったかなと思っています。テレアポが難しくなったり展示会がなくなったり、そういったオフラインチャネルを中心にビジネスをしていたBtoB企業は大きな影響を受けたのではないかと考えてます。この状況を受けて、Webマーケティングに投資をする企業が更に増加したというのが大きな流れだと思われます。

また、特に検索広告については検索数が限られてしまっているなか競合が増え”椅子取りゲーム”のような形になっており、そこに対して適格な広告運用が出来ておらず、費用対効果が合わなくなるといった事象も多く見受けられます。

杉山:直近10年程度の期間においてはBtoBの運用型広告を実施する際には、顕在層向けに検索広告があって、潜在層にリーチするにはGDN/YDAを中心としたディスプレイ広告があって、なかでも割とコンバージョンが取れて費用対効果が合うチャネルとしてFacebook広告(Meta広告)の勢いがあり、BtoBの運用型広告として「Meta広告は外せないよね」というトレンドもあったと記憶しておりますが、今現在そのトレンドに変化はありますでしょうか?

参考:ディスプレイ広告とは?仕組みやメリット、運用のポイントを分かりやすく解説

二平様:そうですね。そこはあまり変わらないといいますか、まだまだBtoB広告においてMetaは強いなと感じています。理由は様々ありますが、特にMetaはターゲティング精度が非常に高いです。また、我々もそうですがFacebook メッセンジャーを使っている経営者やビジネスマンは相当数いるので、法人向けの商材はFacebook広告との相性がいいですね。

あと、検索広告も有効な媒体の一つです。検索行動を起こしている意欲の高い人に向けて広告を出せるので成果が出やすく、業務中に検索して情報収集される人も多い印象です。

媒体優先度は「カテゴリキーワードの検索数×ターゲット数」の考え方で決める

杉山:検索やディスプレイ、SNSなどの様々な媒体があるなかで、 御社のご支援されるBtoBのクライアントだと、「まず顕在層向けのリスティングから始めましょう」というケースが多いですか。それともフラットに媒体は選定するのでしょうか。

出典:アナグラム社提供資料より引用

二平様:基本的に媒体は商材に合わせて選定を行います。そこで私が提唱しているのが「カテゴリキーワードの検索数とターゲットから施策の優先度を検討する」という方法です。

カテゴリキーワードとは、会計ソフトのSaasを提供している会社だと「会計ソフト」、組織課題を解決しているコンサルティングなどを提供しているサービスであれば「組織コンサルティング」というようなキーワードが当てはまります。例えば、そのカテゴリキーワードの検索数で 「会計ソフト」は月間で1.5から2万程度あり、BtoBの商材カテゴリのなかでは検索数の多い分類になりますが、「組織コンサルティング」というカテゴリでは月間で200件程度の検索数しかありません。

となると、「組織コンサルティング」というキーワードでは検索広告を実施しても検索数が多くないのでリードの獲得数を大きく伸ばすことができません。一方で組織コンサルティングは対象となる企業数が多いので、MetaやX(旧Twitter)やLinkdinなど検索していなくてもアプローチできる媒体を利用するといった選択肢を検討するといった流れです。

杉山:確かに、ニッチなカテゴリの商材を扱われていて、検索数が月間50-100程度のためリスティング広告に予算を割くべきなのかと迷われる企業は弊社クライアントでも一定数いらっしゃって、そういった企業にはこの媒体選定の考え方は合っているかと思います。媒体選定の考え方以外にまず検討すべきポイントなどはあるのでしょうか。

まずは目標設定とコンバージョンポイントの設計から

二平様:大前提としてWeb広告を始める前に目標とコンバージョンポイントをきちんと設計する必要がありますね。BtoBは検討期間が長かったり意思決定に関わる人が複数いるため、いきなり「問い合わせ」をいただくのは難しいです。なので、少しコンバージョンハードルを下げてあげるという意味で、資料請求をはじめとして手前の目標となるコンバージョンポイントを設置するのがよいかと思いますね。

出典:アナグラム社提供資料より引用

コンバージョンポイントに関連した話としては、媒体毎のコンバージョンポイントを設計するという考え方があります。検索広告はある程度能動的に探してる人たちなので、「問い合わせ」や「資料請求」でもコンバージョンをしてくれる割合も比較的高いですが、MetaやXを見てる人は「何となく受動的に」で見てる人が多いと思います。

出典:アナグラム社提供資料より引用

その状態で「問い合わせ」をもらうのは少しハードルが高くなるので、ホワイトペーパーなどのお役立ち資料やセミナー申込だったり、コンバージョンポイントをズラして、少しでも興味ある人たちを集めて、ナーチャリングやインサイドセールスで引き上げていくようなマーケティングスタイルになるかなと考えてます。

Webマーケティングを行うなら必ず1度はランディングページを作るべき

杉山:実際にBtoBの企業が広告運用を始める際には、まずテストマーケティングのフェーズがあって、パフォーマンスを確認しチューニングを行った上でアクセルを踏むかの判断が入り、その上で本格的に運用を行うという流れで進めるのが一般的かと思います。ではテストマーケティングにおいてはどういった流れで何を準備する必要があるのでしょうか。

二平様:簡単な流れとしては、まずは*ランディングページを用意し、媒体の選定を行いコンバージョンポイントの設計を行うステップがあると思います。

まずランディングページについては特にテストマーケティングの場合は、簡易的なものでいいと思っていて、「コンセプト」や「その商材は何ができるのか」という情報が記載されていれば良いです。基本的に仮説が合ってるかどうかを検証するために”誰をターゲットにして”、”その人にどういった商材を提供して”、”どういう変化が起きるのか”が分かるランディングページをまず作るというのが1つですね。

BtoBは究極的には「売り上げが伸びるか」「コストが下がるか」なので、ランディングページにこの商材を導入したから売り上げ伸びるのかコストが下がるのかを明記するのが、ランディングページ作成の鉄板施策の1つですね。

*ランディングページ=検索結果や広告等を経由して訪問者が最初にアクセスするページ

杉山:なるほど。クライアント観点からすると「既存のサービスページに流入させるじゃダメなのか」「コスト・リソース観点でランディングページの新規制作が難しい」という声もあるかと思いますが、そこはランディングページを新たに制作した方がよいと。

二平様:そうですね。既存のサービスページだと記載されていない内容がほとんどだと思うので、きちんと「その商材が何ができるのか」が伝わる新しいページを作らないと、そもそも広告文と流入先ページが全く違うことを言ってたら「それはコンバージョンしないよね」ということになりかねないので、ランディングページは必要になるかと思います。

今だとSTUDIOやペライチなど無料で簡単にランディングページを作れるツールもあるので、そういったツールを利用するのもいいと思います。大企業などでそれでも作れないとなった場合はMetaにリード獲得広告という機能があって、ランディングページがなくても配信できる機能があるので、そういった機能を利用するといった方法もあるかと思います。

ランディングページを制作する過程でターゲットに届けるべき情報を整理する必要もあるので、そういった意味でもWebマーケティングを強化するのであれば、ランディングページは1回絶対作った方がいいですね。

杉山:ありがとうございます。商材の仮説を整理して検証するためにも、ランディングページは作った方がよいということですね。Metaのリード獲得広告の話が出たのでもう少し掘り下げますが、ランディングページを制作するのとMetaのリード獲得広告では一般的に*CTRや*CVRの差異はどの程度生まれるのでしょうか。

*CTR=Click Through Rateの略。ユーザーに広告が表示された回数のうち、広告がクリックされた件数の割合を指す
*CVR=Conversion Rateの略。ここでは広告経由の訪問者のうち、問い合わせや資料ダウンロードなどwebサイト上の最終成果に至った件数の割合を指す

出典:アナグラム社「リード獲得広告とは?特徴から配信媒体、運用のコツまで」より引用

二平様:そうですね、リード獲得広告はFacebook内ですべて完結するのでCVRが上がりやすくなる傾向にはありますが、その反面どうしても情報量が少なくなります。

それによってターゲットではないユーザーのコンバージョンが増えやすい傾向があるので、作成の手軽さやCVRと獲得リードの質という面ではトレードオフのようなところは正直ありますね。それを防ぐために、Metaでは*カルーセル広告や動画を使って、情報をしっかり提供した上でコンバージョンに誘導するといった方法もあります。
しかし、テストマーケティングでそこまで実施できないケースも多いと思うので、最低限伝えたい情報はしっかり記載して、そういったデメリットもあるということを理解した上で実施するのがよいかと思います。

*カルーセル広告:1つの広告に対して複数の画像や動画を横並びに表示できる広告フォーマット

杉山:理想はランディングページを用意して、 きちんとターゲットに対して商材の情報や訴求仮説をきちんとした上で作成する。コストやその他理由でランディングページを制作できない場合は、Metaのリード獲得広告で実施するという方法もあるということですね。

媒体の話に少し触れましたが、テストマーケティングを行う際に適している媒体はあるのでしょうか。

テストマーケティングにおけるMeta広告のススメ

二平様:どの媒体からテストマーケティングするのかという観点では、Meta広告が1番試しやすいなと考えています。理由としては、運用が簡単で、ランディングページを作るだけでさくっと広告を出稿できる。ターゲティング精度も高いので、ターゲットをあまり絞らなくてもある程度成果が出てくる印象があります。

検索広告も検討確度が高い人に配信できますが、 キャンペーンの設計やキーワードの追加や除外など運用がMetaと比較すると簡単ではなかったりするので、テストマーケティングの文脈で広告運用を行うのであれば、まずはMeta広告を少額から始めるのがおススメです。

実際に有名な事例として、SmartHRさんは「人事」領域のターゲットでMetaで広告出稿をしてウェイティングリストを獲得していた事例もありますし、これは弊社でテストした事例ですが、医療系サービスでお医者さんに図解を提供するようなサービスで、ニッチなターゲットでしたが、Metaでテストマーケティングしたところ想定よりもコンバージョン獲得が行えたという事例もあります。

上記の通りターゲティングの精度もよくて初心者でも運用しやすいという観点から、Meta広告から始めてみるのがいいかなと。あと、特にスタートアップが提供するサービスは、カテゴリキーワードの検索数がまだ存在しないサービスも多いですよね。そもそも今時点では市場がないことも多く、検索で当てていくのが難しいのでMetaから始めてみるのがマッチしやすいかなと考えています。

杉山:ありがとうございます。テストマーケティングを行うのであれば運用の簡易さやターゲティング観点からMeta広告が使いやすいということがよく分かりました。ではコンバージョンポイントの設計や、その他テストマーケティングにおけるポイントはありますでしょうか?

運用初期のクリエイティブはテンプレート利用やテキストのみでもよい

二平様:テストマーケティングにおいては、「ウェイティングリスト」や「無料登録」などのコンバージョンポイントを置いて、興味がある方に対して「メールアドレス登録」を促すコンバージョンポイントにすることがご支援のなかでも多いかと思います。

バナーなどクリエイティブを作るという観点では、Canvaなどで非デザイナーでも簡単に作れるようになってきています。また、テキストだけのクリエイティブでもコンバージョンは取れる傾向があるので私はよく推奨させていただいています。特にテストマーケティングのフェーズであればテキストだけのクリエイティブでも全然良いと思っていて、前述の通りMeta広告はターゲティング精度が良く、興味ある人に広告を配信できるので、そこで興味を持っていただけるような内容をきちんと記載されていれば、反応が取れる傾向にあります。

▽テキストのみのクリエイティブ例

出典:アナグラム社「【保存版】BtoB向けMeta(Facebook)広告運用のコツとは?クリエイティブ事例から徹底解説」より引用

あと、先ほども少し触れましたが、カルーセルフォーマットはおすすめです。情報を複数のバナーで連続的に訴求できるため、PDCAを回しやすくて情報量もある程度伝えられるので、カルーセルも組み合わせるとリード獲得広告でもある程度情報を与えながらコンバージョンさせることが可能になります。

▽カルーセルフォーマットクリエイティブ例

出典:アナグラム社「【保存版】BtoB向けMeta(Facebook)広告運用のコツとは?クリエイティブ事例から徹底解説」より引用

杉山:確かにクリエティブのお話については、運用体制が手厚くないスタートアップや地方の中堅企業さんなどは、クリエイティブ制作となると一気にハードルが上がる傾向はあると思います。また、「デザイナーを入れてかっこよくなきゃいけない」などを思われるかもしれないですが、Canvaのテンプレートを利用したりテキストのみのクリエイティブだと社内でも作れるので、制作ハードルは下がりそうですよね。

後編ではテストマーケティングにおける広告予算の考え方や、本格的に広告運用を開始する際に押さえておくべきポイントを詳しく伺います。

後編:「BtoB広告の始め方と失敗しない運用方法 | アナグラムの支援事例から学ぶBtoB広告のポイント」に続く

インタビュワー 杉山元紀

大学卒業後、株式会社TBI JAPANに入社。株式会社Paykeに取締役として出向し訪日旅行者向けモバイルアプリ及び製造小売り向けSaaSプロダクトの立ち上げを行う。
アクセンチュア株式会社では大手メディア・総合人材企業のセールス・マーケティング領域の戦略策定や業務改革、SFA・MAツール等の導入及び活用支援業務に従事。
株式会社Paykeに再入社し約10億円の資金調達を行いビジネスサイドを管掌した後、Strh株式会社を設立し代表取締役に就任。

▼保有資格
Salesforce認定アドミニストレーター
Salesforce認定Pardotスペシャリスト
Salesforce認定Pardotコンサルタント
Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント

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